小さな安全ピンを金魚鉢に入れた。それは水の抵抗を受けながらユラユラ揺れてカシャンと水底へ。
水面に濁りを僅かに残す。血は水に溶けると良く言ったものだ。生暖かい水に浸かってしまった白いカッターシャツは、もう着れないほどにどす黒い。


「もう25個目だけど」

言うと、ハッと気付いた雷蔵は申し訳なさそうにガラスケースに入っている何百個もの安全ピンを手にした。

「ごめん三郎、やっぱココってなると勇気が出ない」
「ん、いいさ、まずは腕の痛みに慣れないと」

25個の安全ピンは雷蔵の腕の肉を貫通している。それを見ながら頭を撫で、もう一方の片手でジーンズのベルトを外した。
「わあ、やっぱり三郎のピアスは綺麗だなあ」
(そう言われるとドキドキする、やはり陰部を見られることは恥ずかしい、ああ雷蔵だからか?)

「赤色、いいね」

ソレに舌を這わせてくれると、自然に口へと含まれるのだが、ピアスに雷蔵の歯が当たってカツカツと音が鳴った。それは身体の芯から冷えるような音である。だから頭が狂っていくなどと、判断は皆無である。

「ねえ、拡張やめたの?」
「そんなわけではないよ」
「じゃあ、して?」

その上目遣いに、鉢屋は生唾を飲むようにして左手を小さなテーブルへと伸ばした。手先からくる重みに、愛らしさもズシリと感じる。
水槽は濁っている。あれを見ると、どうして自分はこんなものを手にすることが出来たのか、笑うように思うのだ。
ぼんやり水槽より奥にあるデジタル時計を見ると、3時が8時に見えてしまった。

「痛くないの?」
「んー…最初だけ」

久しぶりに自身の陰部に触れたのだと思う。
銀色に光るピアスは熱帯魚を映し出す。青色のライトは目に痛くもあった。そして駈ける痛みもないそこは、ドクドクと脈をうつ。

「凄い、本当に拡張したんだ」
「うん」
「こんなとこ拡張する人滅多にいない、耳はよく拡張する人いるけど…」
「そうかな、」
「そうだよ」
「ねえ」
「ん、なに」
「このまま、さあ…」

誘われるのは嫌いではないが、誘うのは好きだった。雷蔵だってそうなんだと思う。悔しくもピアスには何も表情すら映らないけれど、反対にそれが楽しかったりもしている。

「ヤるの?」
「うん、もう入れる」

ググ、と雷蔵に寄り掛かるよう進ませたのだが、どうも具合がおかしい。
(ああこの感覚、)
「いたいイタイ…!」
(そう、痛いんだ)


どうしてピアスをしたまま雷蔵の中にペニスを入れてしまったのかとか、今更濁る金魚鉢を見ても何も変わらないのだけれど。
痛い顔は変わらないのかとマジマジ見つめて雷蔵の額にキスをした。

「痛い…ピアスあたってる、裂かれそう…」
「らいぞう、俺のも裂かれそうだよ、一緒」

肩を深く握り込んで腰を動かした。
これは気持ちいいのではなくて、肉が中を裂くことの感覚に悦を覚えているのだ。初め、雷蔵の皮膚に針を刺してしまった時の雷蔵の表情を、必然的にスグ思い出した。

「もう無理!痛いよ!千切れちゃうってば!」
「駄目、最後まで」

熱帯魚を引き裂いたものとはまた違う血生臭さが鼻をツく。そしていつものグチャグチャと高鳴る水音も何処か違うのだ。
(あー…)
雷蔵の腕に刺さっていた25個の安全ピンは、皮膚を食い千切り11個がベッドシーツに佇んでいる。


「雷蔵大丈夫…?」
「ナイフで中をグチャグチャにされた気分。」
「俺だってナイフで刺されたような感覚だったよ」
「ここを?」
「うん」

舐められた。
大事そうにピアスを抜かれては、他に何も考え切れない。
「ねえ、三郎」
「なに?」
「今なら穴開けても痛みないかも、…開けて」
「それ、麻痺してるって言うんだよ」

ベッド横の黒い引き出しからガチャガチャとニードルを探した。今からそれで雷蔵の陰部を貫通させてしまうのだと思えば、背筋がゾクゾクする。
(そうだ、同じ場所に開けてあげよう。先端の、ちょっと下)

「三郎と同じピアス開けたいな」
「雷蔵は青色が似合うって」

ガチンと柔らかい音色は手のひらさえ真っ赤に染めた。
別に死ぬわけではないのだけれど、異様な悲鳴と異様な出血量は鮮明に頭にある。そして痙攣は病むことなどない。

コロリと足元のフローリングに落ちたピアスは、自身のペニスを深く切り落としていたのだ。
(ああ、死にそうだ)

end


綾さまリクエスト有難う御座いました!
現パロということだったので陰部のピアスに固執する鉢雷を書いてみました。軽めグロだったかなーと思いつつ…;もし物足りなかったら言って下さい!その時は書き直しさせて頂きます!


100325











×