「ヤダあっ!」

布団に手が伸びる雷蔵の手を、鉢屋はすぐに止めた。バサリと音が鳴り、あちら側にパタリとくたばる。
露になってしまった雷蔵の脚を撫で、鉢屋はにっこりと微笑んだ。

「な、なに…!」
「雷蔵こそ何?」
「…だからっ、ヤダってばあっ!」

ペシッと脚に這う手を払いのけ、少し身体を斜めに傾けると同時に、顔が熱くなって下唇を噛みたくなっている。

「寒いから布団返して…」
「嫌。今ヤったばかりなのに寒いわけないじゃん」
「寒いもん」
「涙目になるなよ、なんかコッチが悪いことしてるみたい」
「してるっ!早く脚から手を離してよ…」
「雷蔵こそ、早く脚を開いてよ?」

悪戯好きな顔は、悪戯にニヤリと笑う。ムッとした雷蔵の顔など、鉢屋にとってはどうでもいいらしい。むしろ、見続けていたい程に煽られる。
鳴く筈のない烏が外で鳴いた。夜明けも近くないのに、どうしてか不思議なものである。

「ほら、明日も早いんだよ?早く済まして寝ようよ雷蔵」
「…三郎の、バカ」

ぐぐっと足指に力が入り、布団に皺が寄った。
初夏の訪れか、夏虫が煌々と鳴いている。聞くほどに暑さを感じるソレは、汗をじんわりと垂らさせた。鉢屋の言ったことを思い出しながら、背中を伝う汗に雷蔵はドキリとしてしまう。

「恥ずかしい…」
「さっきまで丸見えだったくせに」
「さっきは別!」

反対に目頭が熱くなってしまった。途端に、夕立を模倣するようにぽとりと落ちる。シタシタと染みを作る音は、心地よくも何とも、心を掻き乱してしまう。

「恥ずかしい…よ、もう…嫌だって言ってるのに…い」
「な、ちょっ、そこ泣くところ!?」
「だって…三郎が…!」

頬に手の甲を当てる姿がそれっぽくて、やけに涙が零れていった。鉢屋はそれを見つめながら雷蔵の頭を撫で、下から覗き込むようにして様子を伺う。

「ごめん、雷蔵」

肩を揺らす感覚が、まだ消えていない。
(子供みたい、どうしよう、どうして泣いているんだろう僕。)


「三郎が、…悪いんじゃなくて…僕が、三郎を好き、だから…泣いちゃった」
(嫌とかでもない、唯)
「恥ずかしいんだもん…好き、だから…」

心拍数が増えて行く鉢屋の中身など、雷蔵は知る由もないのであるが、そのような雰囲気は知っている。
互いにドキドキと心の臓を聴いて、似た感情を寄せて行く。

「有難う。でも俺だって、泣きたい程に雷蔵が大好きだよ」

涙を舐めて膝に触れた。
徐々に開かれる脚の経過に喉が唸る。
(恥ずかしい、恥ずかしい、けれど、けれども…)

「待っててね、ちゃんと泣くのやめるから…」

優しい顔で頷く鉢屋の肩に、ゆっくりと手を伸ばす。もうどうしようもならない気持ちが押し寄せては、在る理性を確立させた。
目を瞑りながらも名前を愛しく呼んでいる。


「らいぞう、泣くのやめたらさ、…ね?」

優しく耳元で囁く鉢屋の声に、思わず息を飲む。
外の雨音すら、二人には既に聞こえていなかった。


end


緋月様、リクエスト有難う御座いました!
泣きじゃくる雷蔵とか鉢屋は大好物だろうなーとか、色々鉢屋の身になって妄想してました(笑)雷蔵は可愛いですね´`*もっと濃くすると絶対的にエロスになるので…えへへ!
楽しかったですどうも!


100620











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