「ああ可哀想に」

口々に言って、本当はそんなことどうでもいいって顔を繰り返す。
「ねえ、不破」
「聞こえてるの?雷蔵」
名前だってもう呼ばなくてもいい。呼びながら体をベタベタ触るのもやめて欲しい。縄と肉が密着しているところに触れられると、どうにもピリピリ指先が痛むのだ。
(こんなこと、皆は知りもしないのだろうけど。)

「不破ァ」
「痛っ…!」
「聞いてンなら返事ぐらいしろっての」
「…縄、引っ張らないで、痛い…」
「じゃあ引っ張られないように最初から素直になっておけよ」

今度はグンと後ろに引っ張られ、真後ろに大きな音を立てて倒れてしまった。
もっと食い込んでしまった縄が体を舐める。縄じゃなくても舐められるのは気持ち悪い。
髪の毛が頬に貼りつく、それさえ考えたくはなかった。

「やっぱり両手縛ってたら起き上がりにくいんだな、おかげで眺めがいいよ」
「み、見ないで…!」

僕は顔に灼熱感を覚えつつ一生懸命起き上がろうとする。凄く滑稽だと思った。何かが流れて脚を伝っていくのだけれど、それを見て皆は笑うが僕は全く笑えない。ああ早く今日は飽きて欲しいなって強く思っているだけ、それだけ。
なんて僕は姿も心も滑稽であるのか。

「もうちょっと床に倒れてろよ」
「あ…っ」

もう下半身は冷えきってしまった。流れた後の汗だって、よく分からない程に痕がない。
そして足首に巻かれた縄が重力に逆らう。

「ああだらしない」
「お前は何人飲み込めば気がすむんだ」
「中まで見えてるぞ」

(ああ言わないで欲しい、僕を見ないで欲しい。飲み込むだなんてそんな、気持ちの悪い言葉、いらないったら。だいたい飲み込ませているのは皆だよ、僕は飲む事しかできないのに。中まで見えてるって、見ないで。そうしてしまったのは皆じゃないの、分かってるんじゃないの、みんな最悪、どうして僕で毎日遊ぶの?)

「どうして僕でこんなことするの…?」

涙を流すと皆はイイ顔で笑ったりする。下品な声で下品な事を言ったりする。そして誰も助けてくれはしない。

「こんなことって、ただ俺たちは鉢屋と区別つかねーから痕をつけてやってるだけだろ」
「ガバガバが不破の方ですってね」
「恨むなら鉢屋を恨めよ」
「それかお前のそのお人好しな性格を、だ」

僕はまた固い床に押し付けられて、またベタベタと触られる。
「やめて!汚い!」
顔を背けることしか出来ないから、叫んで背けるのだけれどそれさえも無理なことだった。終わった後の儚さだって、そういうことを知らない三郎だって、僕と三郎を見分けられない皆だって、誰も何も悪くはない筈なのに。
(じゃあ僕が…?)


「お前なんかクチを開けるか足を開くことしか出来ないんだ、それしか出来ないのが不破の方だろう?」


悲しくて泣くと、皆は面白くて笑っているようだった。

end


リクエスト有難う御座いました!
縛り+言葉攻めということでエロスよりになっちゃいました…しかも暗い;縛りとか大好きな分野なので白熱しすぎないよう理性保つのが大変でした(笑)


100411











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