「置いて行かれるんだね、使い物にならなくなっちゃったから、私は必要ないみたい。」

死にたいな、消えかける雰囲気に殺してよとは、この前のように言わなかった。今にも閉じてしまいそうな瞼を薄ら開いて、消えそうな声で名前を呼ばれては貴方から眼を逸らしはしない。
この手は何も掴めなくなったような、冷たい氷浸けに或る創傷色、流出するものは碧色、流入するべきものは淦色彼方。
だと思えば、どうにも白仙の闇に放り込まれたのは、灰狐。


「顔色が、悪い」
「いつものことだよ」


指先が膝に触れた。こんなにも弱々しい筈はなかった。梅のようだったのに、水仙ではないか、まるで手先から肩に至るまで、肩を揺らして笹舟のように嗚呼、何かに飲み込まれる。手を差し伸べたって、掌で掬ったって、捕らえられない現実まで行き過ぎているのだ、儚く苦しく。

「はじめくんも、今日でさよならだったりして」
「何を馬鹿なこと、」
「いいんだよ、私はさよならだけだから」

(苦しく、笑い、笑え笑え、哀しい、何故。葛藤なんぞ消えるわけないのに、どうして握りしめて打破しようとしているのか、なんて愚か者だろうか)

「沖田さん、俺は 」
「ねえ、はじめくん」

無くなるということを、こんなにも恐ろしいと感じることはなかった。ただ怖かっただけであるのに何もかも感じて胸を勝手に痛めるとは、
(過ぎてしまった。)
(過ぎて過ぎて、)

「はじめくん、好きだよ、ずっと傍に居て欲しいぐらい大好き。」

(好き過ぎてしまっていた。手を重ねるだけで切ないと感じていた。)
もうそれが手離す状態であると知ったとき、何も出来ない事を悔やんで暗闇にずぶりずぶり、足元を囚われるしかなかった。底は何千年経てども浸すことはないのに。

その向こう岸に赤花が生えている。(目障りだが睨むことなどできず)
左肩からごっそり、骨ごと喰らわれてしまえ。



「失いたくない、嫌だ、嫌だよ、居なくなっては嫌だ」


鮮やかな色の草を眺め、握る赤い梅の花を枝ごと折っては諭すように、埋めて埋めて見るとやっぱり似合っているなあ、真っ赤。

「傍に居て欲しいと今でも思っています。この先も、貴方のこと」

土の中の腐れた貴方に、梅の香りは届いたのでしょう、か

end



リクエスト有難う御座いました!
沖田さんと斎藤さんで切なくてもどかしい友情ものということでしたが、応えられたでしょうか…´`;意味不乱文は十八番です…。




090218











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