途端、

お前が黄色い和紙の風車をカラカラならしながら無邪気に笑っていた事を思い出した。今まで色んな感情を見てきた頭中、忘れはしない(できない)というのに、何故それを思い出したのだ?
個体は応答しない。

それが繋がり至るところから腐った不安定な糸として引きずり出される。
これは思い出と呼ばれるものではない、ただの走馬灯にゆらめく脳の記憶だ。泣いている奴なんていないだろう、自分が生きようと目的を果たそうと必死なだけであるための諸事情という仮称だからさ。

それを理由と言った。




「みんな、みんな僕に生き延びて欲しいって思ったから、だからだから永倉さんだってッ僕を…斬らなかった、んだ!僕は死にたくないよ!近藤さんだってそう思ったから皆に、だから僕生きてるんでしょ!?」
「…それが、理由になっているつもりでいるのか、お前」

路地を塞いだ。月の逆光さえも消えた。しかしこの場では中々抜刀をし難い。足元の大きな死体が邪魔だと感じれば苛々としてしまったので、物体を蹴ると首が一回転を始める。
(砂利なのか霜なのか雪なのか血なのか雨なのか親指なのか)

「怯えないでいい、すぐ終わる」
「終わるって、僕の命がでしょ、ど、して!はじめはどうして僕を殺そうとしているの!」
「そんなこと、」

考えなくても分かる筈だと心の奥深く、何処かで理解しているに違いない。
(だとしたら早く、その首を跳ねさせて欲しい)

それから、それから俺はどうやって立ち直る気でいるのだろうか。そういうのは恐らく、自然に治るものなのだろうか。そういえば、こいつが友達だと言ってきたときに、一度だけ友達という気恥ずかしい語句を使って返したことがある。



もう二度、言ってもらうには手が必要で足が必要で顔が必要であった。血だらけとは、本当に邪魔なものだらけで御座います。
「笑っても血で見えない、歯さえも赤とは紛らわしいぞ平助」
一突きで口内を貫けば、それは当たり前の事だった。



「どうして俺は、お前を生かさなかったのだろうか」

 分からなかった。
(初めて友を裏切り殺してしまったので、この路地はもう通れないという確信を得、下駄を大通りに投げ捨てると直ぐに痛い音が鳴る。)

「平助、下駄借りるよ」

緑色である鼻緒の下駄を返しに来た時にはもう、赤椿が似合う君は腐れていて益々赤椿が似合う容姿になっていた。
真昼の下で我ながら、嗚呼あの日は上手く首を切断できていたのだなあと思ったのだった。そして、少しだけ悲しくて笑ってしまったのだった。



(はじめ、もういいよ、その下駄は君にあげる)

end



壱さまリクエスト有難う御座いました!
なんか不完全燃焼といったところなので斎藤さんお別れ話はまたいつか書かせて戴きたいです´`;

この話、言わずもがな油小路なんですが、平助を殺したのは一ちゃんじゃないのかなあとか私の勝手な妄想により出来上がってしまいました卑劣ですみません!
彼も容赦はしないので意外と冷たかったんじゃないのかなって…。結局平助は一ちゃんにとりつきそうです´`ホラーになってごめんなさい!




090314











×