夕景色見たさという風な、霞の立つ朝に花の色はないと思いがけなく、不快に感じるべきことではなかった。 由々しいと一人は言ったが、それも然し彼には怱せ出来ぬと悟る。 「どう降だな、大人しくしとけということだ」 「名残の夕立、」 「違う違う七下の雨だ」 そんなもん月並でもないのだから、わざわざ食いに此処まで来やしない、青黒い色をした瞳で、仙蔵は笑った。 盂蘭盆会と混同される贖罪日はとうに過ぎている。はっきりとは捉えがたい気質と、端的にすべてがちぐはぐ、それは気味がわるくも有り。 「馬鹿たれ、縁起でもないことを言うな」 「何処がだ、阿呆」 ずずず、泥人形が随分奇天列に転じ、先を争う可し。何時になったら消えるだろうと登楼するのも、何だか狐につままれたよう。だからといって一概に鬼籍に記するべきものでもなし。 ぎこちない沈黙に、文次郎は創がついちゃアなぁと首を曲げて直垂れるのであった。どんなに奔走しても得るものは亡かった。 「不承知だ、過ぎれば二度と一緒になんぞ見られんことは」 「私とか?」 はなれはなれになる旅の空はこんなにも霖(ながさめ)ではないのだろうが、草紙見て涙たらすのだろう。 「まるで涙雨だな、文次郎」 そっと隣に腰をおろし、溢れ出た涙を拭って睫を濡らしたのは互いに、ほんの少しの間である。 end マコ様リクエスト有難う御座いました! 初めて文仙を書かせて戴きましたが…ど、どうなんでしょう文仙になっていますでしょうか´`; 夏最後の雨を見て哀しくなった文次郎と、そんな文次郎が愛しいと思ってしまった仙蔵のほのぼのだと言いたいのですが、薄暗くなってしまいましたごめんなさい! き、気に入って戴ければ幸いです…!! 090331 ← ×
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