僕を殴って咬んで引き摺り姦した三郎は、僕から首を絞められている。だからといって、何も抵抗しない君はとても大人しそうな化け物に見えた。

そして僕は何も思わない。きっと三郎を殺せやしないのだから、哀れみに満ちて今すぐ、一刻後には手を離してしまうのだろう。そうしたら、君の首には真っ青と真っ赤な僕の手形がついてキラキラと光る。
そうしたかった。


「僕だってお前が好きなんだもの、」
(殺せないくせに)
「殺しちゃったら…側に居てくれないじゃない」
(居るよ)
「じゃあお前は、僕を殺すの?」

三郎の瞳孔が大きく左右一緒に開いてしまった。それはもう、戻りはしない。
震える手を舐めて冷たくなってしまった。
(難しいんだよ、君が愛を理解しようとしたって、ねぇ雷蔵)

三郎という屍は白くもない手を伸ばしてきて僕の肩へ触れる。自然に上体を起こすと向かい重なりあった膝からは、何も感じとれなくなっていた。好きだということも何処かへ行ってしまいました、返して。

舌を入れられると、胃を通り心臓を舐められ臓器を犯されているような感覚に陥ってしまいましたが、君は単に僕の上唇を吸い続けているだけ。
殴られて切れていた口の端が沁みました。

「また、引き摺り姦すの…?」
「うん。だって、雷蔵、ちっとも俺を分かっていないし、愛してくれないんだもん」

触れ合うだけの悲しさはこういうことだと確実に思いました。ちっとも伝わらないんだから、眼を見てくれないんだから、愛しいからって殺す事とは違うよ、そう言ったのに、誰かが。


「俺はお前を殺しはしないよ、愛しているだけ、好き」

三郎はゆっくりと、赤い瞳で呟いたのでした。

end



リクエスト有難う御座いました!

愛がありすぎる感じというリク内容で書かせて戴きました。二人共愛をお互い溢れさせているのだけど、雷蔵は鉢屋以上に自分も愛していると訴えたいのに、それ以上に鉢屋は雷蔵を愛していると思ってる。
結局、愛がありすぎて伝わらなくなっちゃったという。そんな感じです。

リクして頂きどうもでした!ごちそうさまです!




090430











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