流れ星を見たいという三郎と一緒に、延々と夜空を見ていたら随分と遅くなってしまった。 遠くを見すぎていたせいか、三郎がこんなにも近くにいることが何だか凄く不思議に思えて、名前を呼ばれたきり恥ずかしさで視線を三郎に移すことはできない。そんな僕の手を引いて風呂場まで案内してくれたのは、名前を呼んでくれた三郎である。 「流れ星みつけたかったね」 けれど浴槽に浸かっても格子から外を覗く僕を引き寄せ、三郎は空さえ見せてくれようとはしなかった。 「もういいよ、流れ星なんか」 「でも三郎見たいって言ってたのに」 「もう見たくなくなった」 「なにそれ、」 沈黙が、続く。 嫌ではないけれど、さっきまで楽しそうにはしゃいでいた雰囲気は全くない。揺れもしないお湯に満月が映ったかと思えば、それは円を描く波に崩され何も見えなくなっていく。 「三郎…怒ってる?」 「うん」 「僕がさっき、流れ星に夢中になって返事しなかったから…?」 「違うよ」 もういいって、吐き捨てるように触れてくる。腕を垂れる水は本当に拒まない。だからそういうのが嫌だってば、ちゃんと理由教えてよ、グイグイ三郎を押したけれど、完璧四隅に追い詰められていることが、何を意味して何をされるのか全く分かっていない僕は、丸まった猫のように肩を縮め、三郎の行動を待つことしか残されていなかった。 「…三郎?」 真面目な雰囲気の彼から、ぽたりと水滴が落ちて思わずビクリ、体が動く。背中が、冷たい。 「雷蔵の髪あげた姿、凄くいいね」 「は、」 「そそる。」 バシャンと大きい水音をたてて浴槽の底から出てきたのは、僕の両足だった。 溺れる瞬間に三郎が密着してきたことは言うまでもない。一寸もない間隔でホントはさぁ、と三郎は徐にゆっくりと脳天を刺激するかのように呟いた。 「妬いた。」 「え、うそ」 「ホント」 「うそ、嘘ばっかり!」 埋められていることを我慢しながら薄く目を開けると、自身の存在を表すかのように光る空が、僕を抱いている三郎の後ろ、その格子を抜けての高い空に在る。 (な、んで、今さら!) 「あ、あ!流れ星!」 「嘘言うなよ」 「違うって!ほらァ」 浴槽のお湯が外にザバザバと流れ出してから、耳を舐めて三郎が僕に言った一言は、 「嘘つき」 これだけでした。 end しじ美様リクエスト有難う御座いました! 雷蔵が流れ星を必死に探すあまり、自然現象にも嫉妬してしまう鉢屋でした(笑)ほのぼのにしたかったのですが、何だかよく分からないエロスに…´`鉢屋は今日も元気です。 090403 ← ×
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