鬼のような紅い目でグチャグチャと肉を潰す。器用に背骨を抜き取る。頭を転がす。
それが彼なりの遊びであると思っていた。

しかし、今日の彼は死体に興味も示さず、木の上で握り飯を食っている。
向こうの戦場なんか眺めて、笑ったりなんかしていた。

「機嫌いいね、お前」

話しかけると、彼は陽気に返事を返してくる。そうだろう、と。
いつにもない快い返事に嘆くばかり。

「三郎、」
「何?」
「もう、やめよう。こういうの、やめようよ」
「なんで?」

悪気はない。
けれど、良質でもない。
俺は友人であるはずの三郎の行方が分からない。思考、推測、記憶、火焔。紫、赤紫、嗜好嗜虐。
どれも満たない、満たなかったのかもしれない。

「人を殺すのは良くない」
「…八左はいちいちうるさいな。人も殺した事の無いヤツが横から指図すんじゃねーよ、死ね。殺さねぇと此の感覚は分かんないって、ばーか」

懐かしい唄を歌う。
三郎が歌っているわけではなく、木の枝にぶら下がった生首が合唱をしているのだ。
(蛙でもなし、鈴虫でもなしに、)


「そうだ、雷蔵に団子買って帰ろう」


足をぶらぶらさせながら三郎は生首を蹴り、刀で目玉を抉り出していた。
木の枝に絡まる髪の毛、無数の首提灯。

その光景を下に笑んでいるのはお前か、見上げて楽しむのは俺であるか。
引いてはどちらか。





「お前、だろ?だって、笑ってる」

三郎は言った。
否定はしない。

end











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