初めから、迷路のようになっているわけではなく、それは真っ直ぐに伸びるだけの道のように、それは単純である。 自分自身の思い通りになるのならば、この世界はきっと偽物だ。汚いと割りきっているのであるから、抱えた汚さはせめて浄化させてあげたいと言うものである。 酷く焼けていた胸は、やっとチリチリと収まりつつあった。 (早く収まれ、でないと俺が凍死しちまう) 風は冷たい。 あの花は春を待たず死んでしまった。 「報われねぇなぁ、あの花も俺も」 「くく、あの花千切ったの私なんだ」 なんとなく呟いた一言に、七松先輩が付け加える。いつの間に背後へ足を運んだのだと、問う暇もない。 「鉢屋、報われないってお前、楽しそうだな」 (俺はこの人がどうしようもなく嫌いだ。) 屋根に腰を下ろすと夕日は見えなくなっていた。 「楽しくないですよ、全然。」 夜になるのが不安だと、久しぶりに思ってしまった。いつものことであるのに、今日という今日は何も手につけたくない。 報われないと知っている自分は可哀想である。何も知らないくせに、それだけは知っている。 (あーあ、) 「殺しちまいてェ」 汚いことはおやめになって、思っても嫌な気持ちばかり持つでござんしょ?無意味ざんしょ? (嫉妬なんてしても殺そうとしても殺したいと思っても何もならないことはいつもの通り、) じゃあ殺せば、と七松先輩は言う。殺そうかなぁと俺が言えば七松先輩は俺の首にクナイを当てた。 「外方100°見えてなくても下方70°まで見えりゃあ殺せるぜ?」 そう、いつでも俺は大好きな雷蔵を殺せたわけだ。七松先輩が言った理論の通り、正しく確実に。 殺してしまえば嫉妬も無くなるのだから、自分だって苦しまずにすむのだから。 「それもいいですね」 殺された花は今どうしているだろうか。花を殺した張本人はもう居なかった。笑って何処かへ行ってしまった。 この何とも言えぬ苦しい感情を抱えた自分はどうなっているのだろうか。嫉妬の行く末が死だと言うのならば、 ならば、 (雷蔵、もう今日から一生話しかけないし一緒の部屋で過ごすこともないし二度と触れないから、よろしくね) 制御してしまえば良い。 この気持ち全て。 (自分が苦しめば良い、この身体が腐るまで) end ← ×
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