永遠に見つめ合う事は、
非常に難しい事だと、何気なく思ってしまったのです。


「久々知せんぱい」

ほうら、
振り向いたとしても、ね、瞬きするでしょう。

「どうしたの、綾部」

単に笑われるならいいけれど、厭きられてしまっては。
気分が、優れません。



「久々知せんぱいには目蓋が何故あるのですか?」
「へ…、え?」

人間誰しもあると思うけど?
クスリと笑い、そう言った久々知せんぱいの綺麗な黒髪が、ふわふわ、此の、地から僅か、離れた空気という自由の中で右に揺れた。前髪、すら。

間違ってらっしゃる。
クスリと笑うのは
僕の方でしょうよ



「ありませんよ、僕は。目蓋なんて」
「綾部、…拘ってる?」
「別に拘ってません」
「それ、拘ってるって言うんだよ」

そういう疇の言葉は、きっと焼き殺そうと日々努力してくれている太陽が、影を憎むように?それとも僕が今思っている事を、吐き出す術、失った、瞳の虚像と言う名の游がす掌なのか。

「だって、目蓋があると久々知せんぱいが見えないんです。」

見えすぎて悩むのなら別にそれは嬉しいことですけども、ちょっと考えて見て下さいませんか。
頭をヒネッテ
目をヒラケテ、


「疑うのです。黒の奥、ずっと奥の空っぽとか、その白眼と白眼と黒の溶け合う彼方の白靄、まで」
「…見てるんだけどなぁ、ほら、奥底まで」


長い睫の奥に大きな奈落の瞳が凛と魅る。
やっぱり、ちゃんと、見てないじゃないですか、こんなに貴方が大好きな僕のこと。

どうして瞬きするの。
シテ、しまうの。




「久々知せんぱい。少しの間だけ、目をぴたりと閉じていて下さい」


言い逃れでもなく。目玉なんて一粒の当て付けでつまらない水晶玉になるではありませんか。
酷く割るのも僕の勝手です。

そうしたら ずぅっと、
大好きな大好きなせんぱいを見ることができてしまうのでしょうから。
僕をずぅっと見ていてくれるでしょう。

ああ、そうすれば、地中爛々でしょう?


「僕が今からすること、久々知せんぱいも後で僕にしてくださいね」
「うん…?」
「良いって言うまで、本当に目を開けてはダメですよ」







瞬きさえも暖かき視界を遮る其の眼球を覆い追う追う泣き者と見下しましては、
邪魔だもの。




では今から、奇麗に目蓋を切り落としてあげます。


end











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