「きゃあははははははははははははははは!!」

雷蔵は楽しく楽しく嬉しく、たくさん笑った。
勿論、俺は笑えない。それは痛いからで在るのです。何処をどういう風に、其れをこういう風に、何処を何処(イズコ)にすれば良いのやら、痛みの経緯はサッパリですが、楽しそうな顔をしている雷蔵ならば知っているのではないでしょうか、発端までを明瞭に。

「知るわけないよ」

ベキンと骨が折れました。痛くはないのでボヤボヤしてると、それは切り離された左手の手首の骨だということが分かりました。
雷蔵が踏んだのです。


「雷蔵、今笑ってる?」
「笑ってないよ、泣いてるよ」
「雷蔵、泣いてる?」
「泣いてないよ、悲しんでるよ」
「雷蔵、悲しいの?」
「悲しくないよ、楽しんでるよ」
「雷蔵、楽しんでる?」
「楽しんでないよ、笑ってるよ」
「雷蔵、笑ってる?」
「違うよ、笑ってるよ、笑ってるの、うふふ」

幸せそうな顔。

「僕の顔見える?」
「見える」
「嘘おっしゃい、この外道が」

カランと雷蔵の手から短刀が落ちたと思えば、短刀の先端から滴っていた血は弧を描いて床に落ちた。
床に広がる錆びた血に潤いを与えるかのようにそれはそれは、化けて出るのかも知れないと上を見た。
ぐじゅり、音が鼓膜にしゅるり。

「ぐ ぎあああああ、痛、痛いいイイ、痛痛痛イああああアアア!」

片目に突っ込まれた指は奥に奥に奥に奥に!今脳味噌に触れた絶対触れた!雷蔵が触れてくれたんだ!頭痛いけど雷蔵愛してるよ、嬉しゅう御座いますなあ。

「三郎、そんなに悲鳴をあげないで?僕は三郎から突っ込まれても我慢していたでしょう?」
「それと、これと、は」
「一緒だよ?今思えばどうしてあんなに互いを求めたんだろう、快楽のため?」
「イイイ痛イィ!ぐギイイイイ」
「ヤるのは嫌いじゃないよ、好きだったもん、コレ」

肉棒に短刀が貫通した。
気が遠くなる痛さに痛さだとは感じず痙攣を起こしてしまう。
ビクビクと肉棒の先、雷蔵がよく舐めてくれていた先に心臓があるのではないかと思う程。

「三郎、好き」
「俺だって、雷蔵のこと、大好き…」
「死なないで三郎」

あー…脳味噌が眼窩から…あー此れ、イっちゃっている。ヨダレだって垂れている。垂れるのも垂らすのもキモチヨイのだもんな、雷蔵アイシテイル。僕もだよ、君は笑いながらそう言った。



「愛してる愛してる、この短刀で肉を裂き肋を折り中に見える心臓を取り出して、おいしそうに食べる三郎を、僕は愛してるの」

眼前に投げられたのは、短刀。

end











×