早く終わらせて、君がそう言ったのでそれに応えようと、(まあ早くしないともっともっと危険内に近づくのだけど?)がっしり腰と袴を掴んでおいて、右指を丁寧に舐め上げ、隙間から唾液でとろとろになった指を射し込んだ。 「ッ、」 あまりにも滑りがよくてズクズク入ってしまった指は既にもう、二本目。君は快楽の声を出すまいとしている。指の付け根までも飲み込み、最後には何を飲み込みたいのかと不思議に、欲情しながら俺は海面の壊滅のように思ったのだった。 「…聞くにも烏滸がましいけれど、次はなにが欲しいの?」 「ほんと烏滸がまし、なあ。三郎の、あほ」 先に欲したのは自分の方であったのに。すぐ君に言わせたがる。未だしも繋がっているわけではないし通じ合っているわけでもない。風が冷たくて、でも身体は熱くなる、きっとの予想というものを反発的にしてみた。 (どうでもよくはないんだ、ひとつひとつ、原因が大切なんだもの。) 貪るように抉じ開けようとはせず、先端を密着させて徐々にぬるぬると進ませていくと、背中を仰け反らせながら雷蔵が可愛い声を濡れたように上げる。 「やっぱりヤメようよお」 そう言って、腰に回した俺の手を引き剥がそうと必死になるあまり、下肢をたくさん擦り付けてくる始末にある。 そんなにしたいの、グッと引き寄せると、アア、なんていやらしく啼きながら首を振ったりして。 「もっとしてって、そういう合図してる?俺に。」 「違っ、だ、だって、なんで、なんでそんなゆっくり擦りつけるの…」 「うん?感じた?」 「もう離してよっ」 それから言葉の語尾がまた悲鳴染みては蠢く。本能だらけの生き物交尾じゃあるまいし、なにをそんなに。そんなに、雑音を奏でているのは、垂れ流れそうな、唾液。 「らいぞう」 ぎゅうと抱き締めればグチュグチュと音を鳴らして、もっと、中へと自身が気持ち良さそうに入って行く。堪らなくなって、生唾が、ごくり。唇は君の項につけたのだった。 「も、もう、もうやだあ、離して、て、言った、のにぃ」 「離すどころか結合してしまったよね、」 「見えないようにして、ね、ちゃんと…」 「大丈夫。覆い被さってるようにしか見えない」 んく、と喉を鳴らし雷蔵は色のついた顔で振り向き、 「外に出してね、もうすぐ授業始まる、んだから」 それだけ言って口を手で覆った。(もう、此処が倉庫の裏だなんて思わないぐらい、酷く貪欲で強く抱きたいと思ってしまったら、もう、歯止めなんて効きもしないのである。貪欲が一番ダメだと知っているのにも関わらず。) 「ア、も、そんなに、動いちゃ」 「大丈夫だよ、結合部なんて見えやしないから。心配しすぎだって」 小刻みに動いて快楽を得ようなんて無理な話だった。ずっぷりと血管が浮き出るだけの根本を君の粘膜で摩ったって、どうなるの。 「そんなんじゃ足りないって、欲情した俺のコト分かってるくせに、」 「あ、あ、」 「そんなに欲を長引かせて、夜に快楽的失神でもしたいわけ?」 「ち、がっ…」 雪崩れるように前に傾く雷蔵をしっかり抱き留めて、続ける行為はしっかりとした情事になっていく。ただ、先端が入口を摩って粘膜も摩りながら雷蔵の中を突くことで、いま自分だけの雷蔵を確信出来ているように嬉しく艶かしい。 「さ、ぶろう、さぶろ」 腰に絡まった腕に爪をたてながら、栗色の柔らかい髪を揺らして気持ち良さそうに足を痙攣させている。身体をビクつかせていることを見送り、出し入れを繰り返していると、イッたようにぐにゃんと、雷蔵の身体は二つ下りになってしまった。 (そうだ、いつもは雷蔵のも摩ってイク瞬間を一緒にって決めているけれど、ああ、なんだ、雷蔵が先にイッてしまったのか。) 「いやらしいの、」 グイッと引き寄せても起き上がらないので、痙攣した足を下肢だけで感じながら、尻だけを高く上げた雷蔵を愛しい愛しいと思いつつ、もう乱れすぎて訳が分からなくなった君を犯す自身も、すべて吐き出してしまおうと、諭さない。 ぼたぼた、ボタリ。 君の口から涎が落ちて砂を凝固させ、君が出した精液の重みで既に袴は足下にずり落ちていた。みんなみんな砂にまみれて穢くなるんだったら、一度ぐらいは偽善でいいのではないかと、汚い事を想ってしまうのだ紫のように。 「も、お願、さ、ぶろ」 「うん、もうちょっと、もうちょ、とで、イクから、ね、勘弁、」 そう言うとヒクヒク泣いては欲情させるような声でウウン唸り、力の出ない左手で俺の左腕をぎゅうと捩る。(耐えるために終わりたいために、どちらにせよ君は可愛すぎる。) ぐちゅりと耳を麻痺させていた音も肉体のぶつかる音も全てが終了を迎えるように、頭が君だけになったとき君の痙攣は更に大きくなり、果てには壊れてしまうのではないかと思う程、何もかも乱れ途切れてしまった。 「らいぞ、逝く、イ、ク、イッてしま、う」 はあはあ熱い空気を夢中で吸って、あまりの快感にざしゅんとその場に座り込んでしまった。この鎮静を求めていた君はふるふる余韻を残しながらも未だ足をビクつかせている。 倉庫の壁にぱかんと開かれた雷蔵の肉付きの良い足を、あちら側から眺めたらさぞかし、また欲をそそるのだろうと、それだけを考えてしまっていた。 寄りかかってくる雷蔵を抱き締めると、中に入れていたモノがズレたのか萎えたのか、どろんどろん、こちらがわとあちらがわへ伝って行くので、生暖かい感触に思わず身震いを煩わす。 「ま、白、まし、ろ、だ よう」 君が呟く意味、とは、頭の中が真っ白。それとも君の垂れ流した精液か、俺のそそぎ込んだ精液か。まさか霹靂も見えぬ覆われた雲ではあるまいし。 「真っ白、って?」 「あたまの なか」 (ああ、そっち。) 膝上に乗ったまま、精液がたくさんかかった袴をそのままゆっくり左足だけ脱ぐと、一層ぐちゃぐちゃになった下帯を横目に、くるりとこちらを向いて接吻を求めてきたものだから、なんというか、その、 「授業、遅れるけど…いいの?」 瞬間、性器を握り込まれ「馬鹿!」と威勢よく罵られてしまった。短い悲鳴を上げるしかない俺は、片目を瞑り雷蔵の元気な張り手を待っていたが、優しい舌絡めの接吻を甘く受けていた。 「雷蔵、君、怒ってないの?」 「なに、」 「中に出してしまったこと、とか…色々。」 顔を斜めにして咽頭まで舌を一色に染めたがる。ずるずると鳴る音が周りの雑草すら欲情させているのだと思うと、蔦に巻かれて雷蔵を犯されてしまわないよう、しっかりと抱き締めた。 「ほんとは怒ってるよ、三郎がこういうこと、後ろからする、から」 「…う、ん」 「ほんとは本当はこうやってしたかったのに、もう死んじゃえ三郎なんか。」 (拗ねても従順になるのに、抵抗しなくなって啼くばかりなのに。肩をぎゅっと握ったまま名前を呼んで締め付けて快楽の波をイイ顔して感じるだけなのに、お互い。) 「ごめん、ごめんね、雷蔵。」 「んん、」 泥沼に浸かったような教科書を踏みつけ、雷蔵を持ち上げて今度は自身の袴が白濁まみれになることを確信し、優しく倉庫の壁に押し付けた。 (バサリと烏が飛んで行ったことすらも知らない聞こえない、映らない。) 「さぶろう、好きい」 (君の声は映るのに。) end 後背位→対面座位→立位 ← ×
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