「どうしていいか分からなくなったんだもの、」

膝を抱え虚ろな眼は明らかに蒼き空を見てはいない。ひらひら揺れる短命ばかりの草花か、死ぬばかりの蟻の行列、見ているだけであった、君は。


(泣いてるのか笑っているのか無で居るのか)
話題を変えないと窮屈なだけである貴方と私。
(別に逃げなんかでは、)


「見た、見ちゃった。わあわあ叫んで泣いていたね、ね」
「最期まで見たのか?」
「うん、そう」

ギクリ、ともしない。
ニコリ、喜八郎が笑う。

「そうなの、三木を見ていたら、僕、どうしていいか分からなくなったんだもの」
(そうしたら目の前がパーンと赤黒くなって、ボタボタと血が、血だけど塊みたいなので、血肉のような物体であってね、皆。息継ぎもおかしく喜八郎は楽しそうに薬指弄りながら)


ズルリ、左足を前に動かすと妙な音をたて、黄色い花の首は呆気なく千切れた。
「あ、三木」
「なに、」
「また殺してるよ」

足元を指差して、フラりと笑っては口角を上げる。足底で泣いている黄色い花の笑い声が耳障り。
(息の根を完璧、に)
力を入れ直せば、赤い花になっていた。

(地に咲く輩でも血は巡っているのか、気味が悪いではないか白い桜を見ているようであって)
もっと、勝手に死んでくれれば悩まなくていいのに。


「でもさあ、呆気ないよね。生きてたらスグ死んでしまうんだものそこらへんの死体みたいに汚く」
「おまえ、なんかおかしいぞ、喜八郎。」
「おかしいのは三木だよ」

言われて気付けば確かに平然とした記憶さえ蘇らなくて後ろめたさを感じたが、何も思わず華々しい。
(何人殺めてしまった?)
聞いていない、自身に聞いて問い詰める自分。

動揺を、してしまいました。
(していたんだと、思います)


「左手に握っている其れで僕を殺すつもりだったの?」
「まさか、」
「右手に握っている此れで僕は殺すつもりだったけどねえ」

早く早く殺さないと、
それだけなのだ。
   誰かが言っていた、



「僕がお前なんかに殺されるわけないだろう?」
 ドスンと

漆喰の切っ先が胸に刺さった。
(そこから先、霞んだと思へば透き通る黄金の椅子に私は座る。

 死んでも尚生きるため。)

死んだ世界の自由さ。


end

三木がたくさん人を殺すのを黙って見てる綾部。
何れの殺し合い。











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