湯煙騒動あふたー

(※蓮咲伝PSPの兄限定セットについていた小冊子から派生したIF小話です)
大まかなあらすじ:混浴の温泉に着いた一行、玄奘の護衛として一人が一緒に入ることに…




何だかんだと騒がしくなったものの、とりあえず温泉を楽しんだ二人は
逆上せないうちにそろそろ上がろうということになったのだが。

「玄奘様、お先にどうぞ」
「いえ、悟浄こそ先にどうぞ」
「いえ、玄奘様が」
「いえ、悟浄が」
流石は似た者同士の二人。
お互いに譲り合いを止めないまま、こんな押し問答を続けていた。

「「………」」
そして数分の後、何とも言えない沈黙が二人の間に流れる。
背を向けたままなのでお互いがどんな顔をしているかは分からない。
もし正面を向いていたとしても、余程近くにいないと湯気でほとんど見えないわけだが。

このままでは埒が明かない、と
「…分かりました、では先に上がりますね」
玄奘が自分が折れることを決意し、立ち上がろうとした時だった。
くらり、と一瞬目の前が真っ暗になり、そのまま玄奘の体は崩れ落ちた。

ばしゃん。
湯から上がるにしては大袈裟すぎる音に、悟浄は素早く反応した。
「げ、玄奘様?!どうかなさいましたか!」
もし上がったとしてもまだ声は聞こえているはず、返事がないのはおかしい。
振り向いてしまうのを一瞬躊躇ったが、緊急事態にそんなことは言ってられない。

振り向いた悟浄が見たのは、傍らの岩に力なくもたれ掛かっている玄奘の姿だった。
「玄奘様…!!」

危うくそのまま湯の中に落ちてしまいそうになるところを、咄嗟に支える。
結果、本人にその気がなかったとはいえ、抱きしめる形になってしまった。
そこで改めて、(悟浄の理性的に)危険な現状に気が付く。
一応玄奘も悟浄も大きめの手ぬぐいを体に巻いてはいるが、直接肌が触れ合ってる部分もあるわけで。
(俺はなんと恐れ多いことを…!いやしかし緊急事態である今は…っ!!)
一人顔を真っ赤にして葛藤する悟浄。

ちらりと玄奘の様子を窺うが、すぐに目を逸らしてしまった。直視出来ない。
赤く染まった頬と、濡れて額に貼り付いた髪。そしてうっすらと開いたままの唇。
それはひどく扇情的で、悟浄の目には毒以外のなにものでもなかった。
(やましいことを考えるな悟浄!)
必死にそう自分に言い聞かせ、煩悩を振り払おうとする。
玄奘の体を抱えると、急いで湯から上がろうと試みた。

「…ッ…!」
湯から出ることには成功したが、普段より長湯をしていた所為か、
体力のある悟浄も流石に湯あたりしてしまったらしく。
ふらついて膝をついてしまったが、何とか勢いよく倒れ込むのを防ぐことは出来た。
しかし、押し倒したようなその体勢は、傍から見れば勘違い必至の実に危ない光景だった。

そこへ、徐々に近付いてくる知った声。
その声が仲間たちのそれだと気付いた時は、もう遅かった。

「お師匠様?遅いけど、何かあっ…」
入ってきたのは玉龍。悟浄と玄奘の様子を見るなり、常人が見ても分かるほどに殺気が膨れ上がった。
勿論その矛先は悟浄の他にいるはずもない。

「…悟浄、お師匠様に何してるの」
「ち、違うんだ玉龍!玄奘様が逆上せたようだったから俺は、」
「うお?!ちょ、悟浄おまえ姫さんに何してんだよ!」
「ほー、悟浄にそんな甲斐性があるとは思わなかったな」
次々と現れた仲間たちは完全にこの状況を誤解しているようだ。無理もないが。

そしてその後、悟浄の必死の弁解で誤解は解けたが
暫く玉龍からは強く警戒され、悟空と八戒からはからかわれる羽目に。

意識をなくしていた玄奘がその間のことを知るはずもなく、
悟浄に聞いてみても真っ赤になるだけで何も話してはくれない為、
疑問符を頭に浮かべることしか出来なかったという。



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