――気付いてしまった。
貴女へのこの想いが、単なる『敬愛』ではないことに。
しかし、気付くのがあまりにも遅すぎて。
けしてそういう類に鋭い方ではないが
貴女のことをずっと見ていたから、少なからずとも分かる。
その瞳にはもう、あの男しか映っていない。
本来ならば敵であるはずだった、その男。
貴女を力づくで攫い、更には…いつの間にか心まで奪っていってしまった。
貴女がそれを望むならば、
貴女がただ幸せならば、それでいいと思った。
だが、傍で見ていた貴女は
悲しそうな辛そうな、時々そんな表情をしていて。
俺なら、こんな表情を絶対にさせないのに。
いつでも傍に居て、貴女だけを見て、命を賭して護り続けるのに。
――分かっている。
俺では貴女を本当に幸せにはできないことを。
この想いを伝えることができたとしても、貴女はきっと困ったように微笑んで
「ありがとう」「でも、ごめんなさい」と言うのだろう。
例えどんなに苦しくても、あの男を想って待ち続けて。
俺に振り向くことは、けしてない。
――分かっている。
でも、せめて、この想いだけは。
貴女の幸せを一番に願うことを、どうかお許しください。
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