突然壁へと押し付けてきた強気な様子の撫子に、央はらしくもなく動揺を隠せずにいた。暫しの沈黙のあと、

「…撫子ちゃん?どうしたの?」
口調は冷静を装うも、顔を赤くしている時点で無駄な虚勢にすぎない。

「もうはぐらかさないで、央」
自らも僅かに頬を染めたまま、ぐっと顔を近付けてくる。

「………」

少し困った顔で目を逸らす央に、撫子はさらに言い募った。
「私が好きなのはあなたなの。いつまでも"弟の大切な友人"じゃあんまりだわ」

すっかり聡くなった央ならば、撫子の気持ちに少なからず気付いていたはずだ。ただ、気付かないふりをしていただけ。

「…間違っていないよ」
「そうとしか思われていないなら仕方ないけれど、私はあなた自身の正直な気持ちが聞きたいの」
好意を向けてくれているのだという確信が撫子にはあった。以前円が話してくれたからだ。

「…はは、バレちゃってたのか」
照れながら微笑む央は、諦めたようでどこかスッキリしたような顔をしている。

――それから急に、空気が変わった。今までの冗談めいた雰囲気ではなく、真剣な表情。次の言葉を聞かずとも、それは誠実なものなのだと分かる。

「僕も、君のことが好きだよ。本当は円にだって渡したくないって思ってる」

その言葉と共に与えられた温もり。撫子は目を閉じてそのやさしい腕に身を預けた。


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