「っくしゅ!」

冷たい風に吹かれて、つい私はくしゃみを溢した。
なんのことはない、ただ一度のくしゃみが出ただけのこと。
けれど隣にいた悟浄は、慌てた様子で自分が羽織っていたものを差し出してきた。

「玄奘様、お寒いのでしょう。俺のもので良ければ」

彼が真面目に私の体を心配してくれているのが分かる。
でもその分、自分のことを疎かにしているのも確かで。

「悟浄の方が薄着ではありませんか。
私は大丈夫ですから、これは悟浄が使ってください」
「いいえ、しかし」

人のことは言えないけれど、悟浄も大概頑固な性質だった。

「ならばこうしましょう」

考えこんでいた悟浄が唐突にそう言うと、肩と肩をくっつけて
互いの体がすっぽり収まるようにそれを羽織ることになった。

「…これなら、お互いにより温かいですし」
「そう、ですね」

隣から覗いた悟浄の頬は見るからに赤く染まっていた。
私もきっと同じくらい赤い顔をしているのだと思う。


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