むぅと頬を膨らませて損ねた機嫌を訴えてみる。
でも理一郎は見向きもしない。
これではあの時のようにまた放置状態だ。

「せっかく作ってきたのに」

手元の彼の好物を見つめる。
別段料理が得意というわけではない自分が、頑張って作ったもの。

「…いいわ、自分で食べちゃうから」

自棄になって手作りのプリンを一口頬張る。
ほどよい甘さとなめらかな触感…うん、美味しく出来ている。

「…っ…おい、」

今度は理一郎の不機嫌な声が聞こえてきた。
意地でも無視を決めこむつもりが、手を強引に引っ張られ、
さらにスプーンで掬った次の一口をあっという間に奪われて、思わず声を上げてしまった。

「ちょ、ちょっと…!」

動揺する私を余所に、綺麗に平らげられたプリン。
もうひとつあるのに、と言いかけたけれど、
そんな嬉しそうな顔で「美味い」って言われたら…怒る気なんか失せてしまった。


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