【side:R】

バレンタインなんて、今更だ。
他の奴らみたいにはしゃいだりそわそわすることもない。

毎年、習慣のように渡されるあいつのチョコ。
そこに特別な意味がないことくらい、分かっているつもりだ。
『幼馴染み』という立場があるから…所謂義理なんだと。

今まではその義理でさえ、他に渡す相手なんて多分数えるくらいだったはず。
でも今年は違う。課題をやったあのメンバーには渡すはずだから。

それが、何となく面白くない。

「はい、理一郎」
「…どうも」

何気なく渡されたそれをじっと見つめる。

放課後にはあのメンバーが全く同じものをもらっているであろう光景を想像すると、
無意識にひとつ溜息が零れた。


【side:ALL】

そして、放課後。

「りったん!撫子ちゃんにチョコもらった?」
「…ああ」
「僕も作ったんだけど、やっぱり女の子にもらうのは違うよね〜」
「完成度でいえば央の方が上に決まっています」
「素人と比べる方が間違ってんだろ」
「そうだよ。央のは勿論美味しいと思うけど、大事なのは気持ちじゃないかな」
「その通りだよ!円も本当は撫子ちゃんのチョコ美味しいって言ってたし」
「うむ、確かに美味であった。甘くほろ苦い…これが青春の味というわけだな」
「まーたこいつは変なことを……ん?何そんなに驚いてんだよ、加納」
「ほろ苦い…?」
「ええ、どれもビターチョコのようです。ちなみに央はミルクが好きです」
「違うよ円、僕はどれも同じくらい好きなんだ!」
「うーん、俺はビターが好きかな」
「ふむ…みな様々であるな。ちなみに私はほわいとちょこ派だぞ」
「ンなことどうでもいいっつーの」
「……で、理一郎、苦いのがどうかした?」
「オレのは甘…いや、なんでもない」

その味の違いは何を意味するのか。
――それは撫子のみぞ知る。


.


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -