【トロけるチョコレート】
by ナオミ
2011/02/13 13:08
田沼が好きです。
全くの素人ですが、投稿させて頂きました。
お粗末なものですが、良かったら読んで下さい。
【前編】
by ナオミ
2011/02/13 13:09
散歩がてらに、部屋を出た。
明日は、忘れていたがバレンタインらしい。
「おっと!すみませんっ!」
「いや、私の方こそ!こんなところで、寝ていた私が悪いんだよ。気にしないで…」
「あなたは…名取周一!?」
何でこんなところに芸能人がいるのか分からないが、俺はとにかく驚いた。
「おや、君は私のことを知っているのかい?」
名取周一が瞼を瞬かせながら言った。
テレビで見るより、煌めいているな。
まじまじと見ていると、サビースと言わんばかりに煌めきが増した。
「……俺、男ですよ?そういうの、女にしてください。」
「君は、私のファンじゃないのかい?てっきり、そうだと思っていたよ。」
「違います。」
「そんなに、強く否定しなくても…傷つくなあ。」
ぜんぜん、傷ついていない様子で、名取周一が言う。
「俺だって、テレビぐらい見ます。」
「ああ、そうだろうね。」
「……どうでも、よさそうですね。」
「うん。だってどうでもいいから。」
「……。」
「………。」
「何をしているんですか?」
「何をしていると思う?」
「知りません。」
会話にならない。
もういいや、帰ろう。
そう思って、立ち上がる。
「もう、行くのかい?」
「ええ、ここに居てもしょうがないですから。」
「最近の若い者は、冷たいな。そうだ、これ君にあげるよ。」
渡されたものを見て、俺はそれがチョコレートだということに気付いた。
意味判らず、名取周一を見る。
「明日は、バレンタインデーだからね。ファンからの貰いものだけど、私は甘いものが苦手なんだよ。良かったら、貰ってよ。」
ちょっと、ムカついた。
ファンから貰ったチョコレートを、粗末に扱うなんて…
欲しくても貰えない男は、沢山いるのに。
「え?もう開けるの?お腹すいてた?」
場違いな声にムカムカしながら、包み紙を開ける。
見るからに高そうなチョコレートは、口の中に入れるとトロける。
ぐいっと、名取周一の襟元を掴むと、背伸びをして唇を塞いだ。
驚く相手に、チョコレートを口移しで放り込み、にやりと笑ってやった。
【後編】
by ナオミ
2011/02/13 13:11
「あんた、もっとファンを大事にしろよ!これくれたファンは、あんたの好みを分かっているみたいだな。あまり甘くない…」
名取周一は、ポカンとした顔で俺を見ていた。
「参ったな。子供の君に教えられるなんて…でも、間違っているよ。やっぱり、これは甘いね。」
「……っ…んんぅ!」
突然、濃厚なキスをされた。
俺がしたものとは、比べものにならないほどの。
「ご馳走様。君自身が甘いね。大人をからかうから、こんなめにあうんだよ。君、名前は?」
「田沼…要……」
「田沼君ね。覚えておくよ。また会えるといいね。それじゃあ!」
言いたいことだけ言うと、名取周一は腰が砕けて動けない俺を置いて去っていった。
残された俺は、当分動けそうになかった。
「名取周一…あの男は、ホモか?」
自分からキスを仕掛けたことも忘れて、田沼は呆然となる。
「くそ、何がまた会えるといいねだ。そんな保証、何処にもないだろう?」
また、会いたいだなんて不覚にも思ってしまった俺は、どうやらあのキスで名取周一のことが好きになったようだ。
「ホワイトデー、覚えておけよ!」
会えるかどうか分からないけど、またどこかで会えるような気がした俺は、チョコレートのお返しをどうしようか、日が沈む間、考え続けた。
名取周一は、噂通り煌めいていて、そしてホモだった。
女の噂がなかったのは、ホモだったからか。
納得した俺は、残りのチョコレートを口にしながら瞳を閉じた。
名取周一のキスの味は、チョコレート味。
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