R18で暗め。自己責任でお願いします。
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静寂と、鼓膜が揺れる。
揺らしているのは、僕の上に跨って自分の腰を揺すっているワユさんから発せられる音だ。
厚い雲の切れ間から僅かにのぞく月の光を受けて艶やかに乱れる彼女の姿を、未だに何が起こっているのか状況を掴み切れていない僕はただぼうっと見つめる事しかできなかった。
『Pein.』
「…ッは、あぁ……っ!」
ぐちゅりと一際大きな水音が僕の鼓膜を叩き、彼女の中に埋没した熱情の塊がぎゅうと締め付けられる。
その感覚に少なからず覚えた吐精感に耐えつつ、快感で思わず固く瞑ってしまった目を薄っすら開いてみれば、
彼女ははぁはぁと肩で荒い息を吐き出しながら焦点の合わない瞳で僕を見つめていた。
軽く達したらしい彼女の律動が止まった事で、ようやく少しずつ物を考える事ができるようになった脳味噌でどうしてこんな事になっているのかをゆっくりと思い起こす。
まだ極端に体が弱かった頃によく感じていたような、熱が出る前の妙な倦怠感を感じて早めに寝台に入ろうとしていた僕は、遠くで微かに教会の扉が開く音を聴いたような気がして灯かりを消そうとしていた手を止めた。
こんな真夜中に孤児達が外に出て行ったとは考えにくい。廊下に出て様子を見てみようかと部屋のドアノブに手を掛けた所で、唐突に逆側から開かれたそれに驚いて思わず尻餅をついた僕に間髪入れず抱きついてきたのは、長旅に出ていたはずの彼女だった。
前に帰ってきたのは半年以上前の事だったろうか。ずっとずっと会いたくてたまらなかったはずの彼女の様子が少しだけおかしい事に気付いたのは、これまた唐突に、なんの前触れもなく彼女から唇を重ねられてからの事で。
おかえり、もどうしたの、も全て飲み込まれてしまい、とりあえず落ち着かせようと彼女を自分の寝台に座るよう促したのがいけなかったのかもしれない。
そこからの事は、よく覚えていなかった。
「…っ!」
ゆるゆると再開された律動が、再び僕の思考を白く染めて行く。
苦しそうに、でも甘ったるさの抜けない吐息を吐き出しながらワユさんは湿った声で張り詰めた静寂を打ち破った。
「は…ぁっ、ん…ぅ」
彼女と肌を重ねるのはこれが初めてではないし、どちらかというとこういった蜜事に積極的なのは自分よりも彼女の方だったので自分が受け身になる事は珍しい事ではない。
しかしながら、先ほど感じた違和感は募るばかりだ。今日の彼女は明らかにおかしい。どうしてこんなにも、苦しそうなんだろうか。
僕の胸に押し付けられた彼女の手に自分のを重ねようとして、不意にぱたりと肌に落ちるあたたかい雫に気付く。
彼女の汗が滴り落ちたんだろうと思いすぐには気に留めなかったものの、見上げた彼女の頬からぽたりぽたりと雫が落ちているのを見て僕は思わず目を見開いた。
ワユさんが、泣いている。
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