「してないって言える?無茶な事をしてワユさんの身に何かあったらと思うと心配で仕方無いんだよ。わかるよね」

キルロイはいつの間にかワユの手首を掴んでいた。掴む力は強く簡単には振りほどけなかった。ワユにもその意思は無かったのだが。

「…うん」

いたたまれなくなってワユは小さく頷いた。返事と共に掴まれていた手首が緩む。

「わかっているならいいよ。ごめんね、強く言い過ぎたよね」

「キルロイさんは悪くないよ!あたしこそごめん…」

キルロイの表情がふっと緩む。その事にワユは何故か安心した。

「お茶なくなっちゃったね。淹れてくるよ」

キルロイはポットを片手に居間を出て言った。
自分以外に誰もいない部屋で、ワユは掴まれた手首を見ていた。

「あんなキルロイさん初めて見たなー」

そう呟いて、ワユは手首を擦った。
アイクと訓練してた時ですら、あんな表情をした事はなかった。痛々しく心配そうな表情を浮かべてはいたけれども。
それに、あんなに力強く腕を掴まれるとは思ってもみなかった。

「これからは賭けは止めよう、うん!」

ワユはキルロイの心配をそう解釈して、一人頷いた。


――僕は何をしているのだろう。

キルロイはポットを手にしたまま、ひとつ溜め息を吐いた。
賭けとはいえ、彼女が見知らぬ誰かのものになる事など考えたくもなかった。
どのような選択をするのも彼女の自由だというのに。
特別な関係になりたいと思う事は無かった筈だ。彼女がどんな答えを出そうと自分は受け入れられると思っていた。

「まいったな…」

キルロイの頬は熱い。おそらく顔は赤くなっているに違いない。
まさか、こんな事で自覚するとは思ってもみなかった。

自分の独占欲を。

これから彼女の前でどんな顔をしたらいいのだろう。
キルロイは真っ赤な顔をしながら、頭を抱えてしまった。


「ワユさんお待たせ――」

キルロイが新しいお茶を入れたポットを片手に居間に戻ると、ワユはテーブルに突っ伏して眠っていた。その表情はあどけなく、まるで子どものようだ。
しかし、彼女は子どもではない。れっきとした女性だ。たとえ大人になりきれていないとしても。

「あまり無防備な姿を誰かに見せたら駄目だよ、ワユさん」

キルロイは穏やかに微笑むと、ワユのすべらかな頬に口付けを落とした。



END








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Little Library様との相互記念に翠さんから頂きました…!やばいキルロイさん男前すぎてやばい///
ツイッターで翠さんがすてきなキルワユ妄想してらしたので、思わず「YOUそれ作品化しちゃいなYO!」的なノリで迫って(笑)ほんとに作品にして頂いたお話だったりします…!その説はありがとうございましたウフフウフフ

翠さんにはいつもツイッターで私のきもちわるい妄想にお付き合い頂いております…ありがたい…
ハルジル語らせるとすごい人なので(笑)、興味のある方はぜひサイトにお邪魔してみるといいと思います!


※こちらの作品のお持ち帰り、無断転載等は絶対におやめください。



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