謙也は最近いらいらしている。大量のレポートに追い込まれているみたいだ。せわしなく右足を揺すりながら、パソコンに向かっていた。

「謙也、休憩したら?夜食も作るし」
「いや、ええわ」

謙也はパソコンから目を離さないまま早口で答えた。相当きているみたいだ。尚更休憩したほうがいいんじゃないかと思う。

「体壊したら元も子もないよ。せめて飲み物くらい、」
「わかっとる!」

謙也に怒鳴られるなんて滅多になかったから、驚いて肩がびくりと上がってしまった。謙也も罰が悪そうな顔をしている。

「…ごめん」
「いや…俺こそすまん。…今俺ほんま余裕ないねん、名前に当たりたないから先寝とって」
「わかった、あんまり根詰めすぎないようにね。…おやすみ」
「おん」

ベッドに潜ったって寝れるわけがなかった。長い付き合いなのに、謙也が怒鳴るくらい追い詰めてしまったことが申し訳なくて、情けないとも思う。

いつも2人で寝ていたベッドは、一人だとやたら広く感じた。










3時頃になってやっと謙也も一段落ついたらしい。寝室のドアが開いた。わたしが起きていたことを知ったら謙也も気にするだろうから寝たふりをしておく。謙也はすぐベッドに入ろうとはせず、わたしの頭をくしゃりと撫でた。予想外の行動に体が反応してしまう。謙也が手を離した。

「……起きてたん?」
「うん…」
「アホやなあ」
「寝れなかったし」

謙也がベッドに入ってわたしの体に手を回す。

「明日は夜食作ってな」
「うん」

額に謙也の唇が触れて、一気に眠気がやってくる。もうあまり寝てる時間はないけれど朝になって起きたとき、目の前に謙也がいれば寝不足くらい平気だと思った。



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