俺と女の奇妙な同居生活がはじまった。(女からすれば同居といのはおかしいだろうが)女のフルネームは名前・苗字というらしい。女が学生時代使っていたと思われる魔法史の教科書に名前が書いてあったのだ。これからは勝手にだが名前と呼ぶことにしようと思う。
「ねえ、お風呂はいらない?」
俺の頭を撫でていた手を止め、とうとつに名前が言った。風呂?聞き返すように見つめると名前はいいづらそうにぽつりと一言。
「…だって、きみちょっと臭うんだもん」
「………(このやろう)」
「わ!ごめんごめん」
うなる俺に名前はあわててあやまった。(俺だって清潔にしたいんだ)(人間の姿でいれるのならな!)
「でもきみもきれいにしたいでしょ?ほら、わたしが洗ってあげるから!」
なんだって?聞き返すことも叶わず名前は俺をバスルームまで引きずりはじめた。抵抗むなしく俺はドアの向こうへ放り込まれる。名前も続いて入り、後ろ手にドアを閉めた。
くうん。そのときの俺はそんな情けない鳴き声をしていたと思う。