捕らえられたとき、頭を過ぎったのは彼女のことだった。
子供たちが助けにきてくれたとき、頭に浮かんだのは彼女の笑顔だった。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりとドアを叩く。はーい。聞こえた声に愛しさが込み上げた。やっと開いた扉の先に向かって、俺はできるだけ優しく微笑んだ。
「ただいま、名前」
「…シリウス、さん」
目一杯目を見開いた名前を抱き寄せた。泣いているのだろう、肩が震えている。
「名前、」
名前を呼んで、あの時と同じように頬に手を添えた。赤く腫れた目と目線が合う。さあ、あの時続きだ。きっと一生忘れられないような、そんなキスをしてやろう。(ああ、)(そういえば)一番大切なことを伝えていなかったと思い出す。
「名前、愛してる」