謙也とは親友やで。(どんな流れでそんな話になったのかはわからないが)そう白石に言えば、返ってきたのは大きなため息だった。
「一方的な友情やなあ」
白石の言葉に結構なダメージを受けたのを覚えている。女子の中で謙也と一番仲がいいのはあたしだと自信を持って言えるし、正直白石と並ぶくらい、いやそれ以上に謙也には信用されていると思っていたわけで。
(一方的、……)
謙也はそうではなかったのだろうか。あたしと教室で話している時も、一緒にCDショップへ買い物に行った時も、話し掛けられたから話し、誘われたから付き合っただけだったのだろうか。もしかしたら影では白石にあたしの愚痴をこぼしていたのかもしれない。
虚しくなってきて、考えるのをやめた。幸いあたしがそんなことを胸に抱えているとは知らない謙也は変わらずに接してくれている。あたしも謙也が煩わしそうな態度を見せない限り、今までの関係を壊さないようにしようと思った。
「この無駄のなさ、んんーエクスタシー!」
「ぶふっ!」
「きたない!」
「名前がいきなりおもろいこと言うからや!」
「白石の真似しただけやん」
「似すぎやねん!もー俺ほんまお前のこと好きやわー」
言ってから謙也はハッとしたように目を開いた。うっかり言ってしまったという風に。あたしは嬉しくなって「あたしもやで!」と返す。白石の言葉は気にしないことにした。やっぱり謙也だって親友だと思ってくれてるんだから。
「……え、ほ、ほほほんまに?」
「え、うん」
「よっ、よっしゃあああ!」
「な、何?」
「あっ、す、すまん。ほな、えっと、こ、こここれからよろしゅうな!」
謙也は顔を耳まで真っ赤に染めたかと思うと、ぎこちなくあたしを抱きしめた。あたしは驚きで動けない。その割に頭の中は冷静で、あの時の白石の言葉が過ぎる。
「一方的な友情やなあ」
白石ため息の意味が今になってわかった。