7.ココのこころ*(1/3)




ナナシがココの家での生活にも慣れた頃。いつものように占いの仕事で客を捌いているときに『左目の下に3本キズがある男の来訪』を悟って、参ったなとため息を吐いた。分かっている、古い仲のトリコだ。


(あの食いしん坊が来る、か………まぁ十中八九、フグ鯨だろうな)


ココは既に美食屋としての仕事は放棄しているに近い。こうやって細々と占い稼業を続けている方が自分に合っているのではないかとも思えてくる。旧友に久しぶりに会うのは、楽しみといえば楽しみだが(少しくらいは)、ココの心配は別のところにあった。


(いずれトリコたちとも会わせようとは思っていたが…)


ナナシは環境への適応力もさることながら、人間への適応力も目を見張るものがあった。会長のことを龍じい、副会長を茂じい、所長をハンサムと呼び出したときは本当に驚いた……つまりは人懐っこいのだ。そんなナナシがトリコと出会ったら、一気に仲良くなって、自分だけが取り残されるような気がしてしまう。


(いくら毒が効かないからって…独占欲が強すぎだな、ボクは…)


情けない考えを一蹴して家路に着くと、ナナシがいつものように夜ご飯を準備して待っていた。





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