4.おいでませ人間界!(1/3)



ナナシが目を覚ましたのは、それから丸2日経った頃だった。見慣れぬ天井にがばっと飛び起きる。血液が急速に動いてクラクラした頭を抱え、自分の身に何が起きたのかを思い出していた。グル・・・メ界?だったか、あのジャングルは抜けたようで安堵する。


「ジロさん…?」


きょろきょろと見まわしても次郎の姿はない。簡易ベッドではあるが、清潔感のある室内。


(話聞いたときはびっくりしたけど、多分からかわれただけだよね…)


猛獣のことも思い出しかけたが、幻覚ということにしようと脳内から強制排除した。


(配達区域からして、そんなに遠くまで来るはずはないし…少し休んだらジロさんにお礼言ってから帰ろう)


そう思案していると、ドアがノックされた。


「ジロさん?」


ドアの方へ目をやると、見慣れぬ人たちが3人入ってきた。しかもまたまた筋骨隆々なおじ様たち。うん…派手、豪快、ハゲって感じ、と訝しんでいると、その内の1人(派手)が口を開く。


「お嬢ちゃん、どっから来たんじゃ?」


よくぞ聞いてくれた、とばかりに、自分の家の住所や酒屋の名前、果ては通った学校の名前までマシンガンのように話すナナシ。しかし、名称が出るたびに顔を見合わせる3人に、ナナシは不安を覚え始め、口を噤んだ。すると、何やらごにょごにょと話をしていたおじ様たちがこちらを見て話し始めた。


「次郎から聞いておると思うが、ここは人間界じゃ…じゃがさっきからお嬢ちゃんの言っておる住所も地名も聞き覚えがないんじゃが…」





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