キャラは迷子です。まだ把握しきれてない。でも書きたかった。ちなみに書きたい話もう一つあるのでそれも近いうちに書き上げたい。
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私は、お姉ちゃんが大好きです。といっても本当のお姉ちゃんではないのでシスコンではありません。いいえ、血は繋がっているのだけれど、実の姉ではなく従姉だからシスコンではなく……いとこん?肉じゃがの具みたいになっちゃいましたけれども、とにかく、私はお姉ちゃんが大好きなのです。
そんなお姉ちゃんがとある劇団で監督を始めたと聞いて、私はその日いそいそと観に行ったのでした。お姉ちゃん、舞台にかける情熱の様なものは人一倍なのに如何せん演技力がついていってくれていないのが舞台のいろはもわからない私にすらわかってしまうぐらいだったから、監督というのはとてもいいのではないだろうか、だなんて上から目線なことを思いながら観に行って、お姉ちゃんの作った舞台に圧倒された。お姉ちゃんが本当に舞台が好きなことが伝わって来て、舞台上にいる人たちもお芝居が好きなんだなって伝わって来て、本当に、とても、素敵だった。
けれども私は、上演中はお話を追っていたから気付かなかったけれど、終わって演者さんたちの顔を見ていく中で、もうひとつ、運命的な出会いをしてしまったのでした。
*******「いーたーるーさんっ!」
にこにこと笑顔で至に駆け寄ってきたのは、この劇団の監督の従妹であるなまえ。駆け寄られた至の方はもう何度目かもしれない登場に苦笑しながら振り返った。
「どうしたの」
このなまえ、ある日いきなり現れたかと思いきや一体どんな手を使ったのか知らないがいつのまにか監督―――いづみの隣に部屋を得てこの劇団から学校へ通うようになっていた。そうして、初日から至に好きですと言って憚らない、何とも豪胆な娘なのである。
「ガチャ!ガチャひきました??確定のやつです!」
スマートフォンを持って駆け寄ってきたなまえは、目をキラキラさせながら至にそう尋ねた。
至ははじめて好きですと言われた時から(ちなみにそのときいづみもいたが、いづみは目を丸めて絶句していた)半ば突き放す意味も込めて本性を隠さなかったのだが、なんとなまえはゲーマー……というか廃人一歩手前の至に対してひくどころか「ソシャゲですか!?何をやっているんですか!?」とくいついてきたのである。
なんと、なまえもそこそこオタクであった。至同様見た目からは全くうかがい知れなかったが、好きなゲームはやりこむタイプらしい。至のように無節操ではなくどちらかといえばのほほんとしたシミュレーションゲームが好きなようであまり話は合いそうにないなと思ったのだが、違った。なまえがやりこんでいるソシャゲが、至もやりこんでいるものだったのである。それがわかると、なまえはそれをだしに至に近付いた。物腰はどちらかと言えばやわらかなのに、なんとまぁ積極的なものである。
「ひいたよ。なまえちゃんもひいたの?」
「ひきました!」
「あれって課金しないと駄目な奴じゃなかったっけ」
「無理のない課金、略して無課金ですので!好きなものにはお金を使うのが一番効果的に長生きしてくれるのです!」
うんうん、その考え方お兄さん好きだなぁ、と頷きながらポケットからスマフォを取り出してアプリを起動。なまえはわくわくしながら至のスマフォを覗きこんでいる。既に自分のスマフォでは起動が完了していて、同時にお披露目がしたいらしい。
「俺が先に見せる?」
「はい!」
「では。じゃーん」
「……!!」
「いやぁ、性能いいって聞いてたし、ずっと欲しかったんだよねぇ。期間限定とかまじ信じらんないって思ってたけど、来てくれてよかったよ……って、なまえちゃん?」
なまえは、その場にがっくりと座り込んでいた。床は毎日掃除されているから汚くはないと思うけど、女の子としてどうかと思う。
「えーと……?」
「い、いたるさん、ずるいです……」
「うん?」
「そのキャラ!私の最推しなんですー!!」
「なんと」
「ずっと、ずぅっと欲しくて、でも全然来てくれなくて、というか初期作品の頃からなんだかよくわからないけど好きでこれに出るって聞いて嬉しかったのに期間限定だし全然出ないし!!もう私のアカウントには来てくれないんだなって思ってたけどやっぱり誰かがひいているのを見ると……辛い……」
見たことがないぐらいまくしたてられ、至はうんとしか言えなかった。けれど、何と言うかあまり面白くない。キャラとはいえそこまで好かれているだなんて―――いやいや、何を言っているんだ。
「そんなに好きなんだ?」
「……はい……」
「ふぅん……。じゃあ、フレンド欄に常駐させといてあげよう」
「……!!」
なまえはまるで神でも見つけたかのような顔になって立ちあがる。そして、至の手を握ってぶんぶんと振った。
「ありがとうございます!!至さん大好きです!!」
「……はいはい。ところで、なまえちゃんはなに引いたの?」
「この人です!」
ばぁん、と至に画面を見せるなまえ。至はその画面を覗きこみ―――
「は?」
「はい?」
「ちょっと待ってそのキャラ俺が欲しくてひけなかったやつなんだけど」
「えっ!」
なんと、となまえは自分のスマフォの画面を見る。
「それ咲也でもだめだったのに……」
「至さん、運命ですね!」
「は?」
どう考えても機嫌が悪くなっている至。いづみはその姿に人違いだと怯んだこともあるというのに、なまえは全くひるむことなく、というか笑顔全開で相対している。
「私もすぐに育ててフレンド欄に常駐させておきます!」
「……はい」
「私の推しを至さんがひいて、至さんの推しを私がひいた……運命です!!好きです、お付き合いして下さい!!」
「……いや、よくわかんないんだけど……とりあえず、今日中にレベルマしてね」
「合点承知です!!」
告白を流されてもめげない。なまえは早速レベルを上げるためにクエストを開始した。至はその様子を見ながら、なんだか変なのに懐かれてしまったと思いつつも、嫌じゃないのが不思議だなぁと柔らかく笑みを零すのだった。
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