斎藤さんは、わんこですね!
どこか得意げな表情で言った琴羽を茫然と見つめれば、琴羽は指折り数えだす。



「土方さんはおっきな犬、沖田さんはねこちゃん、平助君はちっさいわんこで、……ええと、ええと……千鶴ちゃんも、わんこです」

「犬ばかりだな」

「沖田さんはにゃんこですよ!」

「逆を言えば総司だけじゃないか、犬ではないのが」



ハッとしたような表情をした琴羽は、懸命に何かを絞り出すように唸る。そして、思いついたかのように人差し指を立てた。



「原田さんは、狼さんです!」

「……そうだな。だから近付いてはダメだぞ」

「え……?」



きょとんとした表情が非常に可愛らしい。本当に、奴が狼だということには異論はないので、できるならば近付いてほしくないのだが……奴は面倒見もいいし、琴羽はかなり懐いている。



「斎藤さんは原田さんが嫌いなのですか?」

「そうではない。だが、気をつけるに越したことはないからな」

「気をつける……?」



たぶん、言ってもわからないだろう。
きょときょととわけがわからなさそうに目を丸めている琴羽にふっと笑みをこぼし、その頭をなでてやる。そうすれば琴羽はとたんに嬉しそうな顔になって、ふふふとくすぐったそうに笑った。



「お前は猫だな」

「どうしてですか?」

「今にも喉を鳴らしそうだ」



気まぐれで、いつも色々なところを渡り歩く。その姿にいつもいつも困らされるのだが、こうして側にいるときは誰よりも甘えてくる。それがひどく、嬉しくて……



「そんなことないです……。わたしもきっとわんこです!」

「どうしてだ?」

「だって、斎藤さんがわんこだから」



猫って言われるのも嫌じゃないけれど、と前置きをしてそこから話が進まない。
琴羽はどちらかといえば犬より猫が好きらしいから、自分も猫と言われて悪い気はしないだろう。なのになぜ、俺が犬だったら自分も犬でなければいけないのだろうか。



「わんこどうしじゃないと、結ばれないから……」



顔を真っ赤にして、ぽそりと言われた言葉に思わずその場に倒れてしまいそうになった。どうやら琴羽は、俺の息の根を止めたいらしい。



「そういう顔は、他ではするなよ」



俺は犬だ。犬でいい。琴羽は猫でも犬でもいい。そんなことは関係ないのだ。ただ俺は、琴羽をすべてから守って見せる。



「可愛すぎるからな」



誰の手にも、触れさせはしないさ。








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