まるで駅前のロータリーでみる恋人達のようだった
空になったワイングラスへの気遣い。食後の紅茶が提供されれば、その横に起き直されるミルクポット。相手の立ち上がり様にその椅子を引く仕草。
目に見えそうないちゃつきは、
「皆との集まりでは自制しているよ。彼女が恥ずかしがるからね」
と、言っていたのに。
会話の折にはお互いを視界に入れているのが分かる目配せをしていた。声の大きさも、自然とお互いを意識していた。ふとして二人の不在に気付けば、少しして、柔らかな笑い声と一緒に手を繋いで戻ってくる。ボクの視線に気付くと気恥ずかしそうに(或いは名残り惜しげに)そっと離す。(それなのに、距離は取らないどころか、一歩、近づき合う)
「夜景を見に行っていたんだ」
まるで悪戯がバレた子供みたいに、二人は同じタイミングで照れ笑った。
「ああ、あそこのテラス行ったんですか?」
「はい。とても、綺麗でした」
くすくすと笑う声に合わせて、お互いに顔を見合わせる。
仲睦まじい恋人の距離感だ。
ココさんとなまえさんの目尻に残る幸福は隠しようもなく、二人の肌を明るく染めている。そこには何の気遣いも気負いも無い。まるで駅前のロータリーでみる恋人達のような、何不自由もない、彼と彼女の軌跡。
少し、羨ましいなと、思った。
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久々に書いた小松シェフ視点のココさん夢
その姿に当てられるというより、羨ましくて、自分もいつか恋人が出来たらこんな関係になりたいなと思う2人の姿。
(2022.9.3/執筆)