嫌い

いつも人の気持ちを揺さぶって

好き勝手なことせーって

アンタなんて でえっきれえーだ





久しぶりに里から出た。今日はリリィさんのお使いなのでいつもの忍服ではない。

私服になることの方が少ない為か、いつもの服じゃないことに違和感を覚えてしまう。

前にそれを山野先生に話したら複雑な表情をされたのは記憶に新しい。

オラ、なんか変なことせーったんかなぁ。

山野先生の表情は少し寂しそうにも見えたから。勘違いだとは思うのだけれど。


そんなことを考えながら歩いていると街が見えてきた。

時間もあるし少しぶらついて帰ろうかなんて考えていると、突然後ろから引っ張られた。


「な…!?」


そのまま茂みの中に引きずり込まれる。


「くっ…離、せ!」


思い切り身体を捩ると案外手はすぐ外れ、ようやく相手の顔を見ることが出来た。


「………なんだ、またあんたか」


それは風魔の敵の中でも俺がもっとも嫌いなドクササコの凄腕忍者だった。


「なんだとは御挨拶だな。」

「毎度毎度纏わりついておいてよく言う…」

「ひでえ言われようだ。俺はただ恋人に会いに来てるだけだろ?」

「な!!!だ、誰が!誰と!恋人だっ!!」

「お前が、俺と」

「馬鹿せーってんでねえ!!」


いつもだ。いつもこの男は俺をからかって遊ぶ。

こんなやりとりも一度や二度じゃない。

俺が慌てふためくのを見て楽しんでいるのだろう。悪趣味な奴だ。


「会う度言ってるだろ?俺の番になれって。」

「一度も承諾した覚えはねぇだヨ!」

「つれねえなぁ。」


そう言って拗ねた様子を見せるが、正直おっさんがそんなことやっても可愛くなんかない。

だから別にどうってことはないし、ちょっと言い過ぎたかななんて思っていない。

うんうん、と自分に納得させながらおっさんを見るとにやけた顔と視線がぶつかった。


「…おっさん、気持ち悪いべ。」

「流石にそれは言い過ぎだろ。」


思わず口からこぼれた言葉にはっとするが後の祭り。

素直じゃない自分の性格などとうに知ってはいるが、今のは少し自分が悪いと思う…。

でも謝るなんてできやしない。

どうしようかと表に出さないように焦っていると、ふいに目の前の人物に頭を撫でられた。


「なんてな。そんなに悩まなくても気にしてねえから心配すんな。」


優しい口調で言われ、言葉につまった。

いつもは鋭い眼光も今は優しく見える。

こんなとき自分が子供で相手が大人だと言うことを実感する。

そんなところが大嫌いなんだ。


「勝手に人の頭触るんでねえ…」


おっさんを見ていられなくて顔をそむけたまま手を払おうとすると、いつもなら離してくれるはずの手が、逆に俺の手を掴んだ。


「な、にすんだぁヨ…」

「なあ…与四郎…」

「っ!!」


俺に構うときはいつもふざけているような雰囲気をしてるくせに、突然真面目な顔をされても…困る。


「俺は、お前が好きだよ」


………ズルイ。

ズルイズルイズルイ。

だから嫌なんだ。俺が気付かないように必死になってるのを知ってるくせに、わざと逃げ道を作るフリして追い詰める。


「オラは…嫌い、だべ。」

「嘘つきだな。」

「うっせえべ…」


悔し紛れにしがみ付いてやったけど、どうしても負けてる感が否めない。

口布を外してる凄さんが格好良いなんて欠片も思ってなんかいない。

それでも


「好きだぜ。」




 好きと言ってくれる貴方はやっぱり格好良いのです



「…オラも、好き」






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