柔らかな恋模様
※志摩燐
※甘々
誰にだって心地よい場所や人はきっと存在するのだと知った。それが自分の場合は彼なんだと教えてくれたのも彼自身だった。家族とはまた違った暖かさを与えてくれる場所、幼い頃に頼っていたあの大きくて優しい背中とは違う…ほんの少しだけそこはむずかゆくてじわじわと胸の奥を侵していく熱さを持っていて、けれど酷く安心する場所― あの優秀な弟でも絶対に造れない、だってこの場所を造れるのは彼だけだ
「おーくーむーらーくん」
わざとらしく間延びした名前に視線を向けると明るい笑顔へとぶつかる。へらりへらり、そんな擬音がついてきそうな笑みは彼お得意の技だ。一種の才能、世渡り術。髪の色と比例した明るい表情に燐は僅かに苦味を含ませて返事を返す
「なんだよ、てか変に名前伸ばすの止めろよな。馬鹿にされてるみてぇでなんかムカつく」
「え、馬鹿になんかしてへんよ?うーん…なんというかこれは癖っちゅーたらええのんかな…あとは構って欲しい時とか甘えたい時とかにもその子の名前伸ばして呼んでるかも」
うん多分そんな感じやわ、馬鹿みたく1人で唸りながら悩み通し漸く納得し出された結論は曖昧なものだった。とてもあやふやとしている。しかしだからといって気になる事柄でもなく癖ならば仕方ない、それにその曖昧なものの運び具合は志摩らしいとさえ思えた。すぐ傍で胡座をかいている志摩とじっと目を合わせる、今度はさっきと同じ笑顔の中に愛おしいものを見ているような色を感じた。自分もこんな色を滲ませている時があるのだろうかと考えると柄にもなく照れくさくなった
「なぁ、奥村くん」
「だ、だから何だよ!さっさと言えって」
「うん、じゃあ抱きしめてもええ?」
いつの間にかなんとも言い表せない緩やかな甘さに浸ってしまっている部屋の空気に耐えきれなくなって言葉の先を促せば志摩の口から出てきたのはそんなお願い事。ああこれ以上辺りを甘くしてどうするつもりなんだろう、もう充分に甘い筈なのにお前はどこに行きたいんだ俺をどうしたいんだ。そう戸惑っている間にも伸びてきた腕に体を引き寄せられ気が付けば…もう遅い。お互いの距離はゼロ、呼吸を繰り返す度に志摩の匂いがする。それだけなのにびっくりする位落ち着くのは何でなのだろう
「……俺まだ何も言ってねーんだけど」
恐る恐る背中に腕を回し返しておまけに小言を投げつける。本当に可愛くない、可愛くなりたいとも思わないが面倒くさくて手のかかる性格だとは自分でも分かってはいる。だが志摩はそういうのを全部含めた『奥村燐』が好きなんだと言ってくれる、嬉しいがやっぱり志摩は馬鹿だ。そしてその馬鹿に救われているのが大馬鹿の自分であるのだろう
「良いって言ってないのに抱き締めるって…わざわざ聞いた意味あんのかよ」
「まぁまぁ細かいとこは気にせんで。どうせ嫌とは言いはらへんねんから、奥村くんは」
「う、自惚れんな馬鹿!!」
「ふふ、すんません。でもそれはちょっと無理な話やと思うんやけど?」
あくまでのんびりと囁かれた声音に顔が熱くなるのはそれが間違いのない図星だからだった、肩に頭を擦り付けて熱くなった顔を隠すのがせめてもの抵抗といえば抵抗だ。絶対に見られたくない。けれど「あーこれこれ、この抱き心地…ほんまええわぁ。この腕に収まる感じ、たまらんなぁ」とぼやいた志摩を燐が殴り飛ばすのは近い未来の話だった
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志摩デレMAX、初青祓+初志摩燐。でも書き慣れてない感と京都弁がほんとに酷い…2人共だれおま状態で辛い
志摩燐可愛いよ志摩燐
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