然はちみつ愛






※スガタク♀




彼女が毎週週末になると家に泊まりにくる、というのが習慣になったのは今思い返せばごく自然な流れだった。元々夕食に招待したりする事はかなりの頻度であったのだからいずれ泊まりにくる事もあるだろうなんて考えてもいたのだし、付き合っている男女間では別に珍しい事でもない。「今日帰りたくないなぁ…なんて」と言われれば「…じゃあ泊まって行けば?」という流れにもなるだろう。最初はぎくしゃくしていた彼女も一度そうなると次からはすっかり慣れていて…それからはお互いに決めた訳ではなかったが週末になると家に泊まる、そんな習慣がいつの間にか出来上がっていたのだった



少し遠くから聞こえる水音を耳で捉え指でページを捲る。緩やかな時間が流れている今は金曜日の夜だ、週末、つまり彼女が泊まる1日目の夜。夕食を終えてシャワーを浴びに向かった彼女を待ちながら読みかけの本を読んでいるこの時間がいつもより心地良い。独り部屋で過ごしているのは平日となんら変わりはないのだが、それでも恋人が近くにいるかいないかでいつもより心地良いと思っているのだから実は少し浮ついている自分自身に笑えてくる。…それにしても



(タクト、遅いな…)



数ページ読み終えた所で本を閉じスガタは欠伸を零す。彼女が風呂場に向かってからかなりの時間が経っている筈なのに中々戻って来る気配がない、もしかすると明日は休みだからゆっくりしているのかもしれない。だったら彼女が戻ってきたら今夜はこのまま彼女を抱きしめて一緒に寝てしまおうか― とスガタが眠気を感じ始めた瞬間



「ス、スガタああああ!!」



大きく音を立てて開かれた扉の音と同時に少女の声が部屋に響いた。呼ばれた名前は悲鳴に近く色々と驚きを隠せない間に彼女の華奢な体が自分に抱きついてくる。まだ微かに漂う蒸気と髪から香るシャンプーの匂い。そして控えめではあるが胸元に当たる柔らかいそれ、に……くらりと理性が揺らいだ



「タ、タクト…落ち着いて。どうかした?」



揺らぐ理性を押し殺して落ち着かせるようにタクトの髪を撫でる。水気が含まれたまま萎れる赤はいかにも風呂上がりといった様子でまだドライヤーで乾かしていないのが分かる、加えて瞳に滲んでいる涙から彼女の身に何か大変な事が起きたとしか考えられない。慌てて部屋に駆け込んできてしまう程に大変な何かが― そんな事を巡らせながらしばらく頭を撫でていると少し落ち着いたらしいタクトと眼が合った




「うっう…すが、たぁ……どうしよう」



「泣いてちゃ分からないよ、何があったか説明してくれる?ゆっくりでいいから」



「うん……あのね、」



促した通りゆっくりと口を開いたタクトの表情はやっぱり変わらず真剣で―














「ブラが入んない、の…」



「………」



……その時涙混じりで絞り出された彼女の言葉を聞いてゼロ時間でもないのに部屋の時間が数秒止まったような気がした



「……え…?」



「だからブラが着れなくなっちゃったの!お風呂上がって着替えようとしたら背中のホックが止まんなくて…っ スガタん家のご飯が美味しくてつい食べすぎちゃったり最近ワコ達と学校帰りにクレープ食べに行ったりしてたからかな?だから太ったのかも…せっかくスガタにプレゼントして貰ったやつだったのに着れなくなっちゃっ…!ごめんね、すがたぁ」



「い、いやそれは…」



自身の服の裾を握りしめ再び泣き始めてしまったタクトにスガタは複雑な色を浮かべた。想像していたよりも案外些細な出来事で彼女は泣いているのかと分かり安心できたのは良いとしても…問題は彼女が考えてしまっている『誤解』だ。可愛い天然で片付けてしまいたいがそんな訳にもいかないんだろう



「…それは違うんじゃ…」



「へ?」



案の定きょとんとした顔をしたタクトにああ本当に分かってないのかと躊躇いながら続ける。今更こんな事で躊躇うのは一応自分のせいだと言う自覚があるからなのかもしれない



「太ったとかそういうのじゃなくて、ただ…その…サイズが変わっただけなんじゃないか?」



出来るだけオブラートに包んでそう伝えると漸く自分の勘違いに気付いたらしい彼女を見ると頬から耳までを真っ赤に染めて照れていた。形になっていない音を繰り返し吐き出す様子に指摘したこっちまで何故か気恥ずかしくなってくる



「あっ!! え、あ…あの!ななななんかごごごめ…っ」



「いや…それより僕はこの状況をなんとかして欲しい、かな?」



それが分かった途端更に耐えられる自信がなくなったから。とりあえず明日の予定は2人で買い物に決まりだろう



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こうなってしまったタクト♀は当然ブラをつけてません、そのまま上からシャツを着て出てきたので色々耐えられそうになかったスガタっていう。タクト♀に下着プレゼントするスガタさんとかコメントに困る(笑)


この後タクト♀は人妻さん辺りに「愛されてるのね」とか言われてまた真っ赤になってればいいと思います。ではフリーですので宜しければご自由にお持ち帰り下さい


※フリー期間は終了致しました



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