いサンタの誘惑






※タクト総受け
※ヒロシ視点
※女装有




入学当時から1年1組はイベント事が多い。それは1組になった生徒の特権とも言えるもので全員が理解している。それもこれも一言で言えば『ワタナベ・カナコ』の存在というのが主な理由だった。大金持ちの旦那を持つ人妻高校生で有名な彼女は賑やかなお祭り事が大好きだ。それだけで簡単に説明がつく。だからこそことごとく理由を付けその権限と多額の金を最大限に注ぎ込んでよくパーティーを開くという訳だ。良く言えば太っ腹、悪く言えばただの浪費家…普通に考えれば出来そうもない事を簡単にやってのける― それがワタナベ・カナコ、彼女本人である。全く金持ちの思考というのは基本的に俺みたいな一般人には理解出来ないもんなのだ


そんな彼女だからこそクリスマスというかっこうなイベント事に乗らない訳も当然ない。自宅(クルーザー、と言いつつ俺の家より何倍もデカい)の中にある大きなホールを一つ貸し切って盛大なクリスマスパーティーを開く程のその張り切りっぷりを見た時はクラス一同開いた口がしばらく塞がらなかったものだ。まるで映画でしか見れないような風景を現実に表現するなど…人妻様々すぎるだろう



はるか上にある煌びやかなシャンデリアを見上げて俺はもう一度感嘆の声をあげる。辺りでは徐々にこの雰囲気へと慣れ始めたらしいクラスメイト達がパーティーを楽しんでいた。豪勢な料理を口にしながら談笑をする者がその大半を占める、確かにこんな料理めったに食べる事なんて出来ないだろうから当然か(さっきまでの自分だけは棚に上げているってのは俺だって気付いてるさ) 手にしているグラスの中でしゅわしゅわと微妙に泡立っているシャンパンの残りを飲み干した。仄かに甘い炭酸の痺れが舌を刺激して喉を通る。料理も飲み物も文句の付け所のない、やっぱり金持ちはすごすぎる。そんな貧乏くさい事を考えながら小さく息を吐いた



「皆さん、パーティーは楽しんでらっしゃる?」



ふとそれまで流れていたクラシック(曲名?そんなもん知る筈ない)がぴたりと止まり室内に凛とした声が響いた。にこやかな笑顔を浮かべ高価だろう椅子の上でワタナベ・カナコは組んでいた脚を組み直す。赤いミニスカのサンタ服を纏いそのナイスバディをこれでもかという位披露するその格好はパーティーが始まった時からクラス中の男子の視線を集めていた。流石は人妻高校生、体つきも態度も全部エロい…



問いかけた言葉にはクラスメイトがあちらこちらから「楽しい」と応じている。それに満足したのか人妻はエメラルドグリーンの髪を指で絡めながら続けて話し出した、つやつやと潤いを持った唇が動く



「ふふ、それは良かった。せっかくのクリスマスですもの楽しまなきゃ損よね。さて…ところで皆さんは『クリスマス』と言えば一体何を連想するかしら?」



クリスマスプレゼント?それともクリスマスツリー? …紡ぎ出す単語は普通のものなのにどこかエロく感じるのは何でだろう。原因は彼女の今着ている格好のせいだと思いたい、うん…100%そうだ。それにしても彼女は一体何がしたいんだろうか、クリスマスから連想するものなんて…連想ゲームでもやりたいのか?……ツリーとプレゼント以外にクリスマスって言ったら



「そりゃあ…サンタ、とか?」



「ヒロシ君大正解。その通り、クリスマスと言えばサンタクロースよ」



何気なく呟いた瞬間、髪を弄っていた指でいきなり指差されかなり驚いてしまった。分かりやすく驚く俺を見てくすりと笑い端から端まで全体を見回す



「そう、クリスマスと言えばサンタクロース。聖夜の夜に子供達にプレゼントと夢を届けるのがサンタクロースのお仕事…それってすごく素敵で外せないものだと思いません? だから私達がそんなサンタクロースの代わりに皆さんへささやかなプレゼントをお贈りしますわ」



そう宣言した彼女は楽しげに目を細めた。「シモーヌ」と呼びかけられた少女(シモーヌちゃんはミニスカサンタ服は着ていないが頭には可愛らしいサンタ帽を被っていてすごくよく似合ってる)は「はい、奥様」と返事を返しそのまま後ろのカーテンの奥へと二、三言声をかける。何が起きるのか何一つ分からずざわつき始めるクラス中。要するに人妻は俺達にクリスマスプレゼントをくれるっていう訳なんだろう。だが、『私達』と言うからにはサンタは彼女1人じゃないって事になる。何かとんでもないサプライズでもあるのか?― と誰もが色んな事を考えていただろうその時、聞き慣れた2つの声が耳に届いた



「…い、嫌だ絶対嫌だ無理!やっぱり僕帰るよ!!」



「ここまで来て何言ってるの、タクトくん!これくらいで情けないよっ!」



「情けな…って!?だ、誰だってこんな格好恥ずかしいに決まってるだろ!! それに笑われるからっ!」



「大丈夫大丈夫。スッゴく可愛いよ? ほら早く早く皆待ってる、よっ!…と」



ワコちゃんに背中を押されたのか上擦った声を上げてカーテンからよろめき出てきたのは予想通りの赤い姿、タクトだった。ただその格好は予想通りじゃなく



本当の本当にサプライズプレゼントすぎた



赤いサンタ服とセットにサンタ帽を頭に被っている姿は上から下までサンタクロースで足にはぴったりと合った白いブーツ、サンタ服はぎりぎり膝上のミニスカタイプのもので丈の長さは人妻が着ているものと大差はない。つまり完全に女の子の着る服を身に包んでいた。自分が出てきた瞬間呆然とするクラス中の目を一斉に浴びたタクトは顔を真っ赤にしてうなだれている



「うう…だから嫌だって言ったのに…」



「こんなに可愛いんだから見せなきゃもったいないでしょ。サプライズサプライズ!」



その中にひょっこりと現れたワコちゃんは大きな袋を背負い長ズボンに長袖のサンタ服を着ていた。明らかに着る服が逆だろ、これ。ようやく現状を受け入れ始めた俺はワコちゃんに説明を求めた



「えーと、ワコちゃん? どうしてこうなったんだ?てか着る服逆なんじゃ…」



「私もこっちの方を着たかったからタクトくんとじゃんけんして決めたんだ。絶対女の子がミニスカを履かなきゃいけないルールなんてないんだしね、それに私ミニスカサンタなタクトくん見たかったし」



似合うだろうなぁ可愛いだろうなぁって思ったの、跳ねるように語るワコちゃんの笑みは眩しかった。同時にこうなった成り行きを理解する。タクトからして見ればなんという理不尽な理由だ、似合うと思ったからという言い分で女装…しかもミニスカサンタ服。それはもう泣きたくなるだろう、俺だったら涙の一つも零してるかもしれない



「あー…なるほど。そういう事ね」



「うん、でもタクトくん可愛いでしょ? どこから見ても可愛いサンタさんだよね」



「か、可愛くない!僕が着たって気持ち悪いだけだしワコが着た方が絶対可愛いに決まってるよ!! ね、ヒロシだってそう思うだろ!?」



「え、いや…それは…」



似合う似合わないのやり取りを繰り返す2人に俺は歯切り悪く返事をごまかした。ワコちゃんが着たらそりゃあ勿論可愛い事は間違いないんだろうけど…正直今のタクトの可愛さも半端じゃない。ブーツとミニスカの間の太腿とか脹ら脛が綺麗だし、何よりものすごくサンタ服が似合ってる。ヤバい男だけど可愛い。言うなら



(ワコちゃんGJ!!)



と親指を立てて栄光を称えたい。周りに目を向けるとどうやらこう思っているのは俺だけじゃないらしく 「お前じゃんけん負けんなよな、タクト。あーあワコちゃんのミニスカサンタ見たかったー」 と野次を飛ばしながらちゃっかり脚をガン見してる奴もいるしタカシに至っては恥じる事もなく「へー、やっぱり似合いますね…」なんて1人納得して頷いていた。皆が皆思い思いに感想を囁きあっていたが不満を言う奴は誰もいない。これってある意味でタクトの人気を上げる引き金になってしまったんじゃないか、もやもやと不安な気持ちが渦巻いた。…そういゃああいつはどこにいるんだっけ、この様子をどう感じてるんだろう? と一番の要注意人物を気にかけた俺の疑問に応えるように



「……お仕置きだな」



呟く、地を這う低い声音がシャンパングラスを近くのテーブルに戻していた所だった。12月の気温を益々下げる氷点下に達する冷たさを雰囲気に纏ったスガタは怖い。敢えてタクト風に表すなら



「イ…イッツ・ア・クール…」



むしろコールド(寒い)の領域だったけど



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この後はスガタのミニスカサンタなタクトへのお仕置きフラグ



最近ヒロシが書きやすくて仕方ないです。困った時はマツヤマ・ヒロシ。正直ヒロシに最後の台詞を言って欲しかっただけだったり← 一応タクト総受けだと思いますが曖昧…やっぱりギャグは難しいです(白目)


では皆さん良いクリスマスを!!(逃走)


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