二次青春謳歌戦争






※スガタク←ヒロシ
※『第一次青春謳歌戦争』の続き




この学園で一番人気のある部活は何かと尋ねられればほぼ皆即答で答えるのは演劇部だと思う、それはもう色んな意味で。実際誰にも聞いた事はないが周りを見ていれば分かるもので、何となく暗黙の了解みたいになっている気がしないでもない。確かに俺も聞かれれば例外なく演劇部と答えるんだが… 普通はサッカー部とか野球部とかバスケ部とかその辺りが人気って言われたりするのがお決まりなパターンなんだろう、ここでも決して人気じゃない訳ではない。毎日練習に明け暮れてる部員達の姿に惹かれない訳でもない。ただそれを足しても事実演劇部が人気なのだ、さっきも言ったように色んな意味で。結局人間なんて生き物、美しいものには皆ことごとく弱いっていう事だ(いや、人の事は言えねぇけどさ)



ちなみに今あちこちの窓から校庭へと向けられる数多くの熱い視線を集めているのも演劇部だったりする。今日は週に何回か行われている体力作りの日らしく、授業が終わった演劇部メンツは皆体操服に身を包んでいる。そして基本的なストレッチに励み始めるそんなメンツは今日も今日とて端から端上から下まで美しい。背中から伸ばした拍子にその目線が少しでも合えば野次馬からは感嘆の声が上がり、整った表情に微笑まれでもすれば眩暈でふらつく奴だって珍しくはないのだからもう演劇部のこの人気っぷりはアイドル並だ。部長である…エンドウ・サリナ先輩もそれが分かっててわざわざ校庭で部活動をするよう部員に言いつけているんだろう。一種のファンサービス、目が幸せってやつ



俺がいる一階の廊下からはそのファンサービスがよく見えるのだから余計そう感じる。視界に飛び込んでくる光景に目が幸せだ、いつ見てもワコちゃんも先輩方も可愛い。だがぼけーっと窓の枠に肘をつきながら視線が追うのは体を前に倒す運動と一緒に動く赤い髪だった



(…相変わらず人気なこって)



ぴょんと揺れて跳ねるそれを見ながら小さく溜息を吐く。足を開いた状態のまま背中を押されまた体を前に倒す。制服の時よりもいくらか目立つその体の細さが心配だ…なんて笑えない話。おいおい何回目だ俺、あいつの母親でもあるまいし…心配しすぎだろ。気持ち悪いここまでくると本当に自分がきもい、男が男にこんな心配するなんて― 悶々と自己嫌悪に陥りかけた思考を振り払ってもう一度顔を上げる。するとちょうどあっちも上体を上げていたらしい。髪と同じ色をした瞳と目が合う、まさかこっちを見るとは思わなかったから内心驚いた。「ヒロシー!」と大きく振られる手に素っ気なく装った手を振り返す



「今から帰るのか? 」



「おぅ、俺はお前らみたく部活とか入ってないからな。さっさと帰る帰る」



「ヒロシも部活入ればいいのに…楽しいよ?部活動。なんなら演劇部に来てもいいと思うし」



「…タクトお前俺の事馬鹿にしてんだろ」



タクトの案に呆れて苦笑いを零す。俺が演劇部って柄じゃないのは見て分かる筈だろう。舞台に立って演技なんて冗談でも絶対ごめんだ…いや入部しても舞台に立つなんて有り得ないけど。むしろ立ちたくても立てない、自分の顔立ち位理解してる。こいつとは住む環境が違うんだから、準部員で良くて裏方ってとこだ



「うーん…中々良い案だと思うんだけどなぁ」



「良い案な訳あるか、まず俺はそんな柄じゃねぇの!部活にも入らない。ま、お前が出る舞台を楽しんで見てやる位はしてやるよ」



そうどこか上から言ってみたが実は見る気満々だったりするんだから、もう末期だ。どうかしなくても相当惚れてる救えないまでに。せめて素直に絶対見に行く位言えたら良いものの言えないのがもどかしい、実際言ってたらそれもそれで気持ち悪いって思われるのかもしれない…― だが歯切りの悪い想いも人なつっこい笑顔を浮かべるタクトを見てればどうでもよくなってくるのも事実で。うだうだした自分の事よりもこの笑顔が好きだと思う気持ちの方が強かった



…けれどそんな気持ちも突然消えてしまうのが幸せというやつらしく。ちょっと前に味わった感覚をその時また俺は感じた



「うん!絶対見に来いよ……っ、て、おわあっ!?」



ぐぃっと無理やり前に倒され途中だったタクトの言葉は強制的に消える。それまで何も言わず後ろにいて、いきなりタクトの背を押し出したスガタの表情もデジャヴしかなかった



「す、スガタ!いきなり押すなって…っ」



「部活中にいつまでも遊んでるからだ。ちゃんとやってるのか?」



容赦なく背中にかけられる力に押さえ込まれる様子は予想以上に痛いのか、起き上がるのを許されないまま曲げられた体は徐々に震え出す。加えてタクトの苦しげに歪んだ表情に走る朱に一瞬こいつらが何をしている最中なのかがよく分からなくなった



「は、っ…ちょっ痛い…スガ、タ…!もうむり…やめ…っ」



「無理じゃない。タクトならまだいけるだろ? ほら、ゆっくり力抜いて…」



これ……ストレッチ、だよな?なんていうか、エロい… 茫然と見つめる俺にわざと目を向けたスガタの視線と目がかち合う。楽しげに笑う目に混じる鋭い冷たさに辺りの気温はきっと一気に下がっただろう。ちなみに堪えきれなくなって急ぎ足でその場を去った俺は何だかスガタに負けた気しかしなくて、おまけにタクトのあの顔と声を思い出したら馬鹿らしく反応した下半身に情けないやら辛いやらで…とりあえず俺は泣きたい思いでいっぱいだった



第二次青春謳歌戦争
(『そう簡単につけ込めると思うなよ』)

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反撃のスガタ(笑)


色々おかしい所はありますがスガタクはただストレッチしてただけです、ヒロシがすごく可哀想です。でも彼は健全な男子高校生だった← 公式がちょいちょいヒロシを出してくれるので私の中でタクト←ヒロシ妄想が止まりません



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