一次青春謳歌戦争






※スガタク←ヒロシ
※捏造ヒロシ




この島で生まれてこの島で育った、世間でいう田舎者のカテゴリーに俗する俺の眼にツナシ・タクトという人間はとても新鮮な存在だった。まぁそれは俺だけじゃなくてこの学園の大半の人間に言える事だとは思うけど、少なくとも一年の間ではそうだ。『島の外からやってきた転入生、赤い髪、おまけに美少年』…とくればそりゃあ当然である。羨ましい条件を揃いに揃えたあいつは予想通り入学式の当日から生徒の目を集め続け、今やモテ男として俺の中に認識されている。本当に羨ましい限りだ、『青春』というものを存分に堪能しているのだから代われるものなら是非とも代わって欲しい(それでも本人は満足していないように見えるが、なんて欲深いのだろう) 加えて性格もいいだからこそ友達なんて簡単に作る。そういう俺もあいつの友達だからだ、分かる。惹かれるものが何かあるんだ、人を惹きつける何かが。それはいい事だ、それはいい。ただ大きな問題がある…それは俺があいつに別の意味で惹かれてしまい俺の青春が全てタクトに消えてしまうという俺にとっては大きすぎる問題だった



…で、そんな事は知る筈もない元凶の超本人はと言うと現在机にぐったりとその身を沈めていた。昼休みの真っ最中に教室で1人元気のない様子が眼に映る。なんとなく普段から元気のいいタクトがあんな風になっているとその原因が気になって昼飯を喰う気になれない、これはある意味『恋は盲目』っていうやつか? それとなく席を離れてすぐ傍まで近付くと足音に反応してタクトはこっちを見た



「おーい、タクト大丈夫か?」



「あ…ヒロシ。僕に何か用事?」



「いやそんなのはないけど。どうしたんだ?もしかして具合悪い、とか?」



「ううん、大丈夫。ちょっと空腹で動けないだけだから…」



そう言った同じタイミングで音を立てた腹にああ、とタクトの状況を把握した。なんでも本島から泳いでこの島までやって来たと噂のタクトはその時財布を海の中に無くしてしまったらしい。そのおかげで貴重な生活費を失ってしまったタクトは昼飯を削ったりしてなんとか生活をやりくりしているのだ、本人から聞いた話によると。すると今日も変わりなく昼飯を我慢しているという事になる。俺もそうだが育ち盛りの男子高校生に昼飯抜きは正直かなりきつい



「全然大丈夫に見えねぇよ。ただでさえお前細いんだからさ、倒れるぞ」



「そんな事言われたって昼抜かなきゃやってけないし…うーん…また人妻さんとこでバイトさせてもらおうかな」



人妻…ワタナベ・カナコの所でバイトというのは内容の想像がつかないがそれで生活が楽になるならやらせてもらうべきだろう。こればかりはどうにも出来ない自分が憎らしい、所詮一端の高校生に出来る事なんて限られてるって事だ。空腹で呻くタクトに俺が今出来る事と言えばこれしかない。俺は自分の机に放置したままだった袋を手に取り再びタクトの元に戻った、目の前に置いたそれにぱちりと赤い眼が開く



「これ俺の昼飯のコロッケパン。タクト、コロッケパン食べられるよな?」



「え…く、くれるの!?でもヒロシの分…」



「あー俺はまだ幾つか買ってあるから大丈夫だ。 また金ある時にでも埋め合わせてくれたらそれでいいよ」



「じゃあ有り難く…いただきます!ありがとう、ヒロシ!!持つべきものは友達だなっ」



その内心の友とか言い出すんじゃないか、なんてくだらない事を考えながら分かりやすくきらきらと輝いた笑顔を浮かべて俺の手を取るタクトに胸が一つ高鳴る。こいつの深い意味はない行動一つ一つに振り回されるんだから質が悪いったらない。畜生嬉しそうに俺があげたパン食べてる可愛い…コロッケパンもこれだけ喜んで食べてもらえたら光栄だろう。コロッケパンもパンを作ったおっさんもあげた俺も嬉しい



パンをかじるタクトの姿を和みながら見ている時間は平和で俺にとっては青春だった。ちっぽけな幸せ、だがもう少し位この青春を味わっていたいという俺のささやかな想いは次の瞬間簡単に打ち砕かれた



背中から感じる冷たい視線のせいで



「いっ…!?」



ぞくっといきなり冷たくなった背筋に思わず叫んでしまいそうになる、寸前で飲み込んで振り返った先に恐ろしく後悔した。振り返った先にいたのは一言で言うと 『魔王 』― ここから離れてはいても圧倒的な何かをこちらに向けているのはすぐに分かった。笑っているのに笑っていない。向けられている金色の眼が信じられない位笑ってない。多分クラスの女子なら騒ぎ出している表情だろうが俺からして見れば例え美少年でも無理だ、押し黙る



さっきの俺と同じように自分の席を立ってこっちに足を進めてくる度に威圧される感覚。聞こえる足音すら怖い。俺は怒らすような事したんだろうか?何かここまで怒らすような事をしたのか? ぐるぐるそう考えている間に整った顔立ちは美しい微笑で隣のタクトに笑いかけていた



「タクト」



「ん…スガタおかえり。先生からの頼まれ事終わったのか?」



「あぁ、簡単な用だったからな。それより今から屋上行かないか?今日はタクトの分も昼用意してもらったから」



「…えーと…」



一瞬迷ってからちらっと俺の方を伺う。俺の存在に気を使う辺りが礼儀正しいというか、本当にいい奴だ



「俺の事は気にしなくていいぜ。良かったな、ちゃんとした昼飯喰って来いよ」



「うん、分かった。コロッケパンほんとにありがとう、美味しかったよ」



じゃまた後で。軽い足取りで扉に歩いて行くタクトの様子に少しは腹の足しになったらしい事に一安心した。さて早く昼飯を食べてしまおうと席へと戻りかけた俺に…



「悪いな。楽しんでる所邪魔して」



ぽつりと投げかけていった俺へのスガタの視線はやっぱり鋭かった。2人が完全に消えてから溜まっていた息を吐き出す。まさか俺はとんでもない相手を敵に回してしまったんじゃないか?…青春はそう簡単には俺に謳歌させる気がないらしい



第一次青春謳歌戦争
(にしても怖かったな…)



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そしてスガタ様の決心


捏造ヒロシでスガタク←ヒロシでした


ヒロシは100%捏造です。一人称俺にしましたが…公式ではまだ出てなかったですかね?ヒロシに嫉妬メラメラなスガタさん半端ないです(笑)



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