わふわ、と融解






※新婚門六、馬鹿夫婦
※門田さんのキャラが迷子




まず朝起きて隣にいる筈の人間を探す― なんて甘すぎる行動だろうかと内心自負するのはこの生活が始まった1ヶ月くらい前からか。まさか自分がこんな事をし出すとは全く思わなかったが中々悪くもない朝の恒例ではある…加えて新婚だから仕方がないと割り切ってしまえば早いのだろう



寝室からリビングへ足を勧めて目でその姿を探す。新品のテレビやソファー、昨日と同じく変わらない部屋の情景の中にも見当たらない。掃除でもしてるのかとぼんやり考えた拍子、ふとテーブルの上のそれは視界に入った。千景が置いたのだろう。苺がプリントされたパッケージは可愛らしいデザインで中々引かれるものがある


「あ、京平さん起きたの? おはよー」



扉が開く音と探していた声の方向に振り向く。体で扉を押し開けそのまま足で閉じる。両手で洗濯籠を抱きしめるよう持っているせいだろうがあまり行儀がいいと言えない。エプロンを身に纏った千景もそれは例外ではない…が、黙っておいた



「まだ寝てても良かったのに昨日遅かったしさ」



「いやそれはお前もだろ。そういえばこれ、どうしたんだ?」



「ああ、デザートに食べようと思ってたんだけどお腹いっぱいになったんだよ…なんなら京平さん食べていいよ?これ終わるまで時間かかるからそれ食べて待ってて」



終わったらちゃんとした朝飯作るから。そして笑顔でそう言い千景は目の前を通り始めた。腰で結ばれた蝶々は飛び跳ね揺れているのが目に映る。まるで意志を持って動いているようなそれが愛らしく見えた…パタパタ、響くスリッパの音で遠ざかるのが分かった瞬間。気付けば半ば無意識に襟を掴んで千景を引き戻していた



「え、何…ひぅっ!?」



襟から覗いていた項を軽く舐めると驚いた声をあげその拍子に腰が崩れかける。鈍い音を立てて床に落ちた洗濯籠から乱雑した衣類が散らばり広がっていたがそんな事は無視して。千景の体を支えあげてそのままソファーになだれ込む



「ちょっ、京平さ…!!朝から何やって…俺洗濯しなくちゃって言ったじゃん!」



「洗濯なら後で手伝う。それで問題ないだろ」



「…っ、あ、朝飯は!?」



「今からお前と『これ』食うからいい。どうせ終わった後なら朝飯作れないだろうしな」



指で着ていたシャツとエプロンを肩がはだける位まで脱がしながらそんな言い逃れを一つ一つ塞いだ。コクリと生唾を飲み込んで向けた目に『まじか』と訴えかけられているのが分かる、だが分かった所で此方が返すのは『まじだ』という色だけだ





歯を使ってラベルを引き剥がせば人工色で彩られた固形混じりの液状からは乳酸の独特さと苺の匂いが香る。傾け注ぎ容器から液状が伝って。首から胸元を2/3程染めて残ったそれは頬に数滴垂らす。苺の果肉が含まれているせいか、どろどろと溶けきれていないその色は妙に厭らしく感じられた。ぺろりと頬を舐め取るとむずかゆさからか「うう…っ」と曇った声が漏れる



「昨日、あんなにしたのに、まだ足りないのかよ……そりゃあ俺だってずっと引っ付いてたいけどさ…っん、」



「んな事言わなくても分かってるだろ。それに日曜なんだからゆっくりすりゃあいい」



「それもそうだけど…って、てかこれ…まじ恥ずい…から」



脱がすなら早く脱がして、自身の格好を見て弱くなる語尾。それこそ苺より赤いんじゃないかと疑う位熱にうなされた表情に愛しい以外の感情が湧き上がってこないのも頷ける


「      」 耳元に寄せた最上級のその言葉に千景が同じように返すまで、そう時間はかからないだろう




ふわふわ、と解(『仕方がない事』と割り切った結果)




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胃がもたれる…
新婚+嫁エプロン+苺ヨーグルト=エロス と発想が暴走した結果である


※企画提出文
門六@(苺)ヨーグルト
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