糖カフェインの中毒性






※学パロ(図書委員長と図書委員)




部屋を包む独特の匂いは呼吸を繰り返す度に体を循環してその感覚を感じられる、普段全くといっていい程本を読まない俺でもこの部屋― 図書室の本の匂いはすごく好きだった。言葉に出来ないような何だか優しくて暖かい雰囲気、それが心地良くて…安心出来るこの場所が好きだ。これも図書委員なんてのになった特典なのかもしれない、なんてそう思いながら手元のシャーペンをくるりと一回しする



「おい、手止まってるぞ。ちゃんとやれ、追試明後日なんだろ」



単位取れなくなっても知らないからな、回転したシャーペンを見てなんとも恐ろしい事を口にする彼の前には何冊かの本が積まれていて本当に本好きなんだなといつも思わせられる。まぁ好きでもなきゃ図書委員長なんて役、絶対にやらない。確かなんとかの兄弟とかいうシリーズを今は読んでるんだったか…一度勧められて頭の痛くなる位の分厚さに丁重に断ったのを覚えてる、あんたは俺にこんなのが読めると思ってるのか文庫本でも眠くなんのに! そう言った瞬間笑われたのが悔しくて仕方がなかった



「う……そ、そうなんだけど分かんねぇんだもん。俺に数Uとか分かると思ってんの?京平は」



「変なとこ開き直んな、お前が分からないっていうから勉強付き合ってやってんだからよ。ちゃんとやらねぇなら帰るぞ、俺は」



「すいませんやります!やるから俺を見捨てないでマジで、お願いだから!!」



京平にまで見捨てられたら俺はどうなる、既に担任に軽く見捨てられてるのに。詰め寄る勢いで喚く俺に「ったく…なら頑張れよ」と若干溜め息混じりに返しまた本へと意識を戻した京平。優しいあんたに甘えっぱなしの俺ってほんと救えない奴、じわじわと巡る自己嫌悪。まずは赤点を取らないところから始めなきゃいけないが…いつの話になるんだかは分かったもんじゃない




浮かび上がる自己嫌悪の波を追い払ってとりあえずノートに目を向ける。後ろの窓にかかるカーテンが風に靡いて揺れ動いていた。今は俺と京平以外誰もいない放課後の図書室、落ち着く空間。ふわふわと心地よさだけが漂うこの場所がまるで俺達2人だけの世界みたいに感じられて…ああこういうのが幸せっていうんだろなって。そう考えを持つと追試の勉強も嫌に感じなくなるから不思議だ。それで余計にそういうのを京平と分かり合いたくなって……




「…なんか…キス、したい…」




ぼんやり呟いた。靡くカーテンの白が見えて、それから自分がとんでもない事を呟いたんだと正常な意識が理解する。どうか聞こえていませんようにと願いながら恐る恐る視界に入れた京平は驚いた顔をしている…残念ながら俺の呟きは聞こえていたようで…嫌でも体は熱くなっていく。ちょ、こっち見んなよ恥ずかしいめちゃめちゃ恥ずかしい穴があったら入りたい!



「い、いやあの、いい今のは勢いでっていうかなんていうか…べ別に願望って訳じゃな…っ!いやしたくない訳じゃないんだけどむしろしたいんだけど、だ、だからその―」



「千景」



ガタッと椅子が動いてそれまで本とノートなんかが映っていた景色が不意に京平だけに変わる、指で回していたシャーペンが離れて床を滑る音。触れる唇からは少しだけ甘いコーヒーの味がしてさっき微糖のコーヒーでも飲んだのかな、とか。触れていたのは一瞬だった筈なのにそんな事を巡らしてしまう位長く感じられた




「いきなり何を言い出すかと思ったらそれかよ。ま、少し位はいいか…今は俺とお前しかいないしな―」




そう笑いながら髪を掻き回す京平の掌に俺はどうしたらいいか分からなくなって。絶対これ以上勉強なんて無理、なんて…ただ微糖の甘さにまた想いを馳せるしか出来ないんだ




糖カフェインの中毒性(放課後、図書室にて)




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※同盟提出文



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