Dear Honey's message






目の前にあるのは酷く甘い誘惑で、そこにただ存在するというだけで先程からどうしようもなく俺の感情をかき乱してならないものだった。当然俺のものではないそれの持ち主は現在部屋にはいないのも一つの原因なんだろう、普段は気にならないものが気になって気になって落ち着かないのだから……そしてまた微かに聞こえるシャワーの水音をBGMに俺は深い深い思考へと溺れる。伸ばせば確かに届く距離にある





門田(恋人)の携帯を見るか見ないかという"誘惑"に―




(うぅ…どうしよう、めっちゃ気になる物凄い気になる)




ちらちらと携帯に視線を向け手を伸ばしては引く。ああ、門田が風呂に行ってからこれ何回繰り返したかな。入れ違いに風呂に向かった門田を見送って喉乾いたから冷蔵庫にあった水もらって、それから偶然テーブルの上の…携帯を見つけちまってからだから結構な時間経ってるか― うわ、どんだけ気になってんだよ俺!




(…別に門田が浮気してるかもとかそういうのは思ってないし…いやでも、やっぱりもしかしたらって事も、あるかも…って…いやいやそれでも普通に駄目だ駄目!人の携帯勝手に見るとかさ。てか俺女々しすぎだろ!!)




独りで悶々と考えている間にも自然と指は携帯へと触れていて完全に行動と思考は噛み合ってないのが分かる。早くしなければ門田は戻ってくるだろう。見て後悔するか見ずにこのまま気になりながら過ごすか…ああもういい!んなの―




(見るに決まってんだろ!このままとか鬱陶しいだけなんだからよ!!)




勢いよく携帯の画面を開きメール機能へと指を動かす。これで見つかって怒られたら何も言えないけどもし怪しいメールが一件でもあったら逆に問い詰めてやる。そう開き直って受信boxをクリックし表示された受信メールを上から一つ一つ見……て…




「……っ!」




それから思いっきり声をあげそうになり思わず口を手で制止させた。同時に動かす指も止まる。15件辺りまで開いた所でそれ以上見たくなくなってしまった、というか…俺は自分の首を自分で絞めている事に気付いた。なんせ開いたメールの殆どの宛先名が





『千景』で登録された間違える筈がない俺の名前だったんだから―





怪しいメールなんて見る陰もなくて仕事関係だろうものと他には静雄や遊馬崎、女と言えば狩沢さんくらいだ。でもその中でも大半はやっぱり俺が送ったメールばかりで





自分がそれだけ門田の事が好きなんだと嫌でも思い知らされる




(あ、有り得ねぇ…俺こんな門田にメールしてたのかよ…)


改めて知らされるとこんなに恥ずかしいのものなのかとさっきとは別の意味で携帯を見た事に後悔する。しばらくメールすんの止めようかな出来る自信ないけど、とりあえずこんな姿見られたら死ねる!





だが見つからない内に携帯を閉じようとした瞬間、逆に体に腕が回されてどうにも出来なくなった。香る石鹸の匂いに逃げ場も塞がれて…いっそ誰か俺を殺して欲しい




「これで満足したか? 色々分かって良かったな、千景」




ほんとごめんなさい
まじすいませんでした
もう二度と人の携帯
勝手に見たりしねぇから
この事は忘れて下さい
本当に!!




Dear Honey's message




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