※真→久保

従順な犬はいい、どんな命令にも逆らわず従い余計なことをしない聡明さが好ましい。だが反抗的な犬を自分好みの従順な犬に躾けあげるのは、なにより楽しいことだ。癖の悪い手足を、整った顔つきを、そしてあの鋭く射抜くような目を飴と鞭を持って躾けあげる。今から心が踊るじゃないか



※久保時

「俺だけを見て?」 背中が痛いくらい後ろから抱き締めて耳元で囁いてくる。低くて心地良くて俺が大好きな、けど同時にちょっと嫌いな狡い声。だって言われなくたって俺はお前だけをずっと見てる。でもお前は時々俺を見てくれないんだ。どこも見てないから、狡い



※時→久保

あいつは時々すっごく不安定だ、俺を見てるのに見てなくて確かに俺の隣にいるのにそこにはいない。無表情のまま宙を見つめる目が、実は見かけより細い体が、ゆらゆら揺らぐ煙草の紫煙が、あいつを作りあげる全部が消えてしまいそうで。俺はあいつを繋ぎ留めるのにいつも必死になる



※時久保

欲しがっていた言葉を伝えるとあいつは嬉しそうに笑う、まるでこの世で一番の幸せを手に入れたみたいに柔らかく穏やかに笑う。でもその言葉をあいつは心から信じてはいないんだ、だって目の奧が笑ってない…幸せそうなのにどこか寂しげな複雑な色をしてる。だから俺はあいつにホンモノの幸せを与えてやりたい。あいつが俺にくれたみたいに



※久保時

あいつに殺される夢を見た、水中で首を締められてそのまま深く沈んで消えていく夢。酸素を奪い体に重く纏わりついていく水ときつく皮膚に食い込むあいつの細い指や少し泣きそうな目が酷く印象的だった。とても幸せだった、これが正夢だったらいいのにとさえ思った。あいつになら俺は、



※久保時久保

「時任は俺のこと好き?」
「は、はぁ!?いきなりなんだよ」
「いや、特に意味はないんだけどなんとなく?」
「なんとなくで聞いてくんなよ!そういうの恥ずいだろ…大体久保ちゃんはいつもーー」
「時任」
「……」
「ね、お願い」
「…好き、に決まってんだろ」
「うん」
「好きだって」
「…もっかい言って」
「好きだ、久保ちゃん」
「……うん」
「久保ちゃんも俺のこと好きだろ?」
「うん」
「俺は久保ちゃんが好きだし久保ちゃんも俺が好きなの、これからもずっとな」
「…そうだね」

(虚構な僕は君がいないと自分の気持ちさえ分からない)



※真久保

ゆっくり執拗なまでに攻めたててくる舌の感触は別に嫌いじゃなかった。ただ甘いバニラの味とそれと対比するみたいに時々される甘ったるいキスは好きじゃない、甘いものは好きだけど正直こういうのは気持ち悪かった。キス自体が気持ち悪いのか、こういうことをしてくるこの人が気持ち悪いのか。…それともそう感じてるくせにぼんやりそれを受け入れてる俺が気持ち悪いのか、自分のことの筈なのに一体なにに対して気持ち悪いと思ってるのかも分からなかった

咥内で混ざり合いもうどちらのものなのかも判別がつかなくなった唾液を飲み下す。僅かに動いた俺の喉を見て真田さんが微笑を浮かべた

「いい子だ」

そのまま顎に指をかけて耳元で囁く。眼鏡を取られて視界がはっきりしないせいか、真田さんの言葉がやけに大きく頭の中で響いた気がした


(シュガーコート)




※時久保時
※リバ



「ココ、吸って?」



久保ちゃんは痕をつけられるのが好きだ、ヤったあとはいっつもこうやって痕をつけて欲しいって強請ってくる。今言われたのは首筋、ちょっと前が空いたシャツなんかを着たら一発で見える場所だ。お望み通り軽く首筋に歯を立てて肌を吸ってやる。ちゅう、なんて小っ恥ずかしい音が部屋に響いた。ほんとはこういうことはあんまやりたくない、でもあの久保ちゃんの頼みだから多少の羞恥は我慢してる。だって。首筋に浮かんだ赤い痕を指でなぞり久保ちゃんが少し嬉しそうに顔を綻ばせる、だってこんな柔らかく笑われたら絶対断れないに決まってる。結局俺は久保ちゃんに弱いってことだ、このエロくてスケベでおっさん臭いどうしようもない大型犬に



「…ん、上出来」


「頭撫でんなっての。つーかほんと久保ちゃん好きだよなー、痕つけられんの」



頭を撫でられながらそう言ってみる、なんでそんなに好きなんだろなってのはずっと思ってたから。すぐに消えてしまう赤いそれを何でそこまで求めるんだろう、正直久保ちゃんの考えは分からなかった。頭を撫でいた久保ちゃんの指がゆっくり降りてきて頬に触れる、そしてそのまま甘くて蕩けたみたいな表情で俺を見つめた



「だってこうしてると俺は時任のものなんだって感じがするっしょ?」



つけられたらつけられただけ、お前のものなんだって感じがする。恥ずかしげもなく言い切るこいつを俺はそれ以上もう見てられなくて、照れを隠すように久保ちゃんの唇にキスをした。そんなこと言われたら余計にこういうことをするのは好きじゃないなんて言えなかった、むしろもっとやってやらなきゃいけないんじゃないかって気にさせられるから不思議だ。あーくっそ、ずるいずるい久保ちゃんはずるい、そんで怖いすっげぇ怖い



「……まだつけて欲しいとこあるか? あったら言えよ」


「あら、えらく積極的。珍しいねぇ」


「こうなるよう仕向けたのはてめぇだろ!こうなりゃ嫌ってくらい
つけてやる、そんで明日後悔すればいいんだよ」



「うん、いっぱいつけて後悔させてね。…じゃあ俺もつけていい? 時任に、痕」


「………ふ、服着て見えないとこにしろよ!」


「りょーかい」



腕に首筋に、肩、胸、脚、それ以外にも、本気で後悔させてやる勢いでどんどん赤を散らして。お前は俺のものなんだって久保ちゃんにも自分にも言い聞かせながら。一生消えなきゃいいのにと浅はかな願いを込めた



翌朝、首裏につけられた痕に全く気付かず出かけてしまった俺が久保ちゃんにマジギレしたのはまた別の話



(杜鵑草)




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・シュガーコート:糖衣、(不快なものを)甘美に見せる
・杜鵑草(ホトトギス):秘めた思い、永遠にあなたのもの


Twitterログを何本かと時久保時、全体的に久保ちゃんが弱めなのは私が精神的時久保派だからだと思います。あとちょいちょい入ってくる真久保、真田さんも好きです。最後の時久保時は久保ちゃん痕つけられるの好きそうだなって思った結果、久保ちゃんは不確かな言葉より確かに残る形が欲しいんじゃないかな



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