番外編 | ナノ
ドSな彼はVampire


『ドSな彼はVampire』


今日は待ちに待ったハッピーハロウィン!!
みんなでお菓子を食べてワイワイやる!!
つもりだったのだが、廊下を歩く俺の足取りは重い。

「せっかくのハロウィンなのに…補習…」

こんなに日の落ちた廊下を一人で悲しく歩かなきゃならないのも全て、俺のオツムが悪いせいだ。イエス、自業自得。

ちなみに大友くんはもちろん、碓氷たちは全員補習回避。

「倉谷め裏切りやがって…」

「あれ?栗島くん?」

名前を呼ばれてのっそりと振り返れば、分厚い書類の束を抱えた会長さんと、その隊長の米津先輩がいた。

「会長さんと米津先輩…」
「久しぶりだね、栗島くん」
「何半べそかいてんだよ」

からかうような顔して近づいてくる会長さんに、ポツリと呟く。

「トリート…」
「あ、トリックは言わないんだね…」

それに反応したのは、心優しい米津先輩。

「そうだ、さっき隊の子に貰ったお菓子あげるよ」
「い、いいんでしゅか!?」

お菓子に飢えていた俺。つい食いつくと、一瞬驚いた顔をした米津先輩は、すぐに目を細めて「もちろん」と笑うと、ポケットに手を突っ込んで、何かを取り出す。

そして差し出された手から受け取ろうとしたところで、俺の腕は掴まれた。
横から伸びてきた会長さんの手によって。

「え、なんで!?」
「一樹くん?」

俺を無視する会長さんは、首を傾げる米津先輩に自分が持っていた書類を押し付けると、行く先だったのだろう方向を指差す。

「書類は一人で校長室に届けてこい」
「え、やだよ、これは一樹くんの仕事じゃん」
「ついてくって言ったのは米津先輩だろ?なら二人で行こうが一人で行こうが変わりないだろ」
「あー、もう、分かったよ。まだ仕事終わってないんだから大人しく生徒会室に居てね」

なんとも俺様な発言をする会長さんに怒るでもなく、ただ少し面白くなさそうにした米津先輩そういうが、会長さんは「いいから早く行け」と撥ね付ける。

「全く、相変わらず横暴だなぁ。それじゃあ、またね栗島くん」

一つため息をついた米津先輩は、俺の頭を撫でると、すっとワイシャツのポケットに何かを入れた。

「ま、またこんど!」

挨拶をしてから、ポケットの中身を取り出してみると、可愛らしい包装紙に包まれたキャンディが二つ入っていた。

「やったー!」
「さぁ、邪魔者も消えたしな。行くぞ、チビ」
「えっ!?えっ!?」

ぐい、と俺の襟を掴んだ会長さんは、そのままずるずると俺を引きずって歩き出してしまった。




***


何故か連れてかれた先は生徒会室。

いや、確かに米津先輩はちゃんと生徒会室に居ろって言ってたけど、それは会長さんだけで。

「会長さん!?なんで俺までここに連れてきたんですか?てかお菓子くれるんですか!?」
「さぁ、それはお前次第だな」

お菓子はくれないんだな?

「じゃあ帰ります!では!」
「まぁ、待て」
「うぐっ」

もう用はないとそのまま回れ右をして帰ろうとしたが、それも失敗。勢いよくソファに押し倒された。

「何かが起こった!」
「そんな急ぐんじゃねぇよ、何も菓子食うだけがハロウィンじゃねぇだろ?」

何を言いだすんだこの人は!

「そうだなぁ…ほら、食え」
「え?…んむっ」

そしてそばにあるテーブルに手を伸ばした会長さんは、皿に乗っていたマシュマロを数個、無雑作に掴むと、俺の口にねじ込んだ。

息苦しさにもごもごと口を動かしていると、そんな俺を上から見下ろしていた会長さんは、意地悪い顔で笑った。

「んくっ、ごくんっ」
「お前は今マシュマロ食ったよな?」
「食べたっていうか…突っ込まれたっていうか…」

まぁ美味しかったけど…

「よし、なら今度は俺にいたずらさせろ」
「…え、…ひっ!?」

そういうや否や、会長さんはその長い指で俺の首筋をつぅ…っとなぞった。

な、なにすんのじゃ!

「あ、あの…ひぅっ」
「へぇ、そんなに体捩って、指だけで感じてんのか?」
「やっ、これ、むぐっ!」
「いいから黙って食ってろ」

そう言ってまたマシュマロ突っ込んできた。

さっきよりも量の多いマシュマロと、体重をかけて覆い被さってくる会長さんに、手足をばたつかせるが、簡単に抑え込まれる。

「おっと、暴れるなよ」

そして首筋に顔を寄せると、べろりと柔らかく湿った舌がそこを這った。

「やっ、あ、ぅ…」
動いた拍子に、閉じきらない口の端からよだれが垂れる。

こんな汚いものを会長さんにつけてはいけないと体を離そうとするがそれは叶わず、それどころか首にまで垂れた涎を舐めとった。

「ひぃっ!や、やだ、きたな、だめ、ひぅっ…」
「甘いな…」
「んんっ…」

逃げたいのに、会長さんの舌が動くたびに体から力が抜ける。

そんな俺を笑うようにフッと息を漏らすと、

「ひぎっ!?」

徐ろに首に歯を立てた。

「あ、ぁ、いだ、いたいっ」

血は出ていないのかもしれないが、噛んだ後をさらに甘噛みしたり、舐めたり、ぢゅ、といやな音を立てて吸ったりするから、会長さんの口が触れる部分が酷く熱くて、身体中が痺れる。
執拗に首に口を寄せる姿は、まるで、そう、ヴァンパイアそのものだ。

「あ、あぁ…ふぁ、や、…ふ、ぅ…」

なんで、なんでこんなことするんだ。

「…はぁ、おい、嫌だとか言ってる割にはちゃっかり感じてんじゃねーか」
「ひぁっ!?」

やっと顔を離したと思ったら、今度は膝が、俺の性器をぐりぐりと押し上げた。

少しの痛みと、背中を這い上がる快楽に慌てて自分のそれに目をやると、しっかりズボンを押し上げていた。

「ハハ、何驚いた顔してんだよ」
「あ、あぁ、ふぁ、や、んんっあっ、やぁ」
「まぁ、首噛まれて勃起する自分のドM具合に驚いたかもしれないがな」
「うぅ…やらぁ、ふぅっ、ひ、んぁ、ふぁっ」
「泣くなよ、煽ってんのか?心配すんな、今から俺が…おい、チビ?」

俺は色々混乱しすぎて、意識を飛ばしてしまった。

その後、慌てて戻ってきた米津隊長さんに寄って俺は寮に運ばれ、無防備すぎだと碓氷に叱られ、怪我はないかと心配して体のあちこちを見てくる碓氷に歯型がバレて、何故かさらに碓氷を怒らせてしまった。

ちなみに、中途半端なところで強制終了させられた会長さんがその日ずっとモヤモヤしていたのは、また別の話。

(あなたはドSなVampire)
(お菓子の誘惑には気をつけて)


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