暇なら廻れ | ナノ
3


「栗島は何にするんだ?」


俺の方を向きながら尋ねてきた大友君が、黒板を指差す。その口調と言えば、多少の堅さはあるが、友達がファミレスで言う「お前何にする〜?」と変わりない。寧ろ意味は同じだが、ブラックボードには俺の好きなパフェの名前なんて書いていない。


「あー…迷ってるんだ」


イベントなど非日常にはワクワクしちゃう可愛い俺だけど、委員会とかには興味はない。ぶっちゃけてしまうと何にも入りたくはない。唸りながら黒板を睨みつける。何か感じたのか、倉谷が勢い良く振り返る。いや、お前を睨んでた訳じゃないよ。だけどなんだか楽しそうな表情になった倉谷は、そのまま体ごと後ろを向いた。


「大友、委員長やりなよ」
「いや、」


おい、倉谷。


「なんて良い案だ!」
「でしょ〜ん」
「やるな倉谷!」


硬派で真面目で、某CMを思い出させる背筋ピーンな大友君こそ、委員長に相応しい!


「栗島…?いや、俺は」
「はーい!先生!」


俺達の意思疎通具合を察したのであろう大友君は慌てたように声を上げる。しかし遅かった。立ち上がり、腕をしっかり耳に付けて挙手する粋な小学生さながらな倉谷は、いち早く相坂先生を呼ぶ。いつものナマケモノな君はどこだ?

「倉谷、どうした?俺の専属パシリやる気になったか?」


立ち上がった倉谷に気付いた相坂先生が首を傾げる。先生、さっき「お手伝い係り」って言ったじゃん。黒板にもそう書いてあったじゃん。早速口滑らせてんじゃねーか。もう誰もやらないだろそんな係り。


「やらねぇよ…あ、やりませんわよ。大友を委員長に推薦しまーす!」


タメ口をきいたことサラッと流した倉谷は声高らかに宣言した。そして後悔。大友君が困った顔をしているではないか!


「あ、倉谷、やっぱり大友君には…」
「栗島」


好きな物を選ばせてあげようよ?と続けようとしたところで、右隣から大友君が俺の名前を呼んだ。やり過ぎたと申し訳無さから、眉を下げて大友君の方を向くと、少し迷った表情が見えた。


「栗島は、俺が委員長になった方が良いと思うか?」
「え?…まぁ、大友君、しっかり者だし、優しいし、背筋ピーンだし」


何やら不安そうな大友君に、思ってたことをさらけ出すと、最後のフレーズで首を傾げられるが、構わず続けた。


「俺は、委員長は大友君だったらいいなぁ、って思った、かな…?」


やっぱ無責任だったかな?という気持ちが強いから、語尾が疑問系になってしまった。余計な事言ったかな、と大友君をちらりと伺うと、何だか嬉しそうな表情で、「そうか」と呟いた。

明らかに倉谷の独断だと分かったのだろう。相坂先生は「大友、いいのか?」と確認を取っている。その表情は、断る事を予測している。俺も断ると思った。だけど、


「はい、俺やります」


いつもの凛とした声で返事をした大友君に、皆が少し驚いたような、納得したような顔をする。俺も倉谷も目を小さく見開いた。あんなに戸惑っていたのに。流石大友君だ!


「よし、じゃあこのクラスの委員長は大友で決定だな」


相坂先生の声に、全員一致の拍手が起こる。少し照れたような表情の大友君。これこそ青春だ!青春の1ページだ!

そこからの進行は委員長の大友君が取り持った。なんともテキパキとしていてスムーズ且つ、皆の意見をキチンと聞いている。下手すれば相坂先生よりも纏め上手である。


ちなみに俺はというと。初日から先生を無視し(無意識)、さっき思ったことをそのまま口にしていた(無意識)という大失態を犯して、さっきタメ口を使った倉谷と一緒に先生の「パシリ」になりましたとさ、めでたし、めでたし。


「あ、配るはずのプリント忘れた。おいパシリーズ、取ってこい」
  

わざとですよねそのすまし顔!!!


「くらたに、」
「栗島ぁ」

「「先生鬼畜!!!」」


俺等はプリントの他に山積みの教科書を何度も往復して運びました。めでたからず!!



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