バカの悪あがき | ナノ
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「え、とごめん…今なんて?」

そう不審げに聞き返したのは、2年A組の羽田 俊哉(はだ しゅんや)。
色素の薄い瞳と高い身長、甘いマスクは学校内でもなかなかイケメンだと話題の彼だか、今はそのイケメンフェイスを混乱の色に染めていた。帰ろうとして持っていた鞄は、先ほどドサッと音を立てて床に落ちていた。

そして羽田が目を丸くして見つめる先、やけに真面目そうな顔をして羽田と対峙するのは、2年E組の雪村 孝太(ゆきむら こうた)。

こちらはどこにでもいるようなTHE平凡くん。帰宅部代表に恥じぬ貧相な体をしている。
そして特筆すべきところは、ただ一つ。

彼は近年稀に見るほどの馬鹿だった。


「だから、俺に羽田の精液をくれ」

そう、たとえば、一度も話したことのない人に、こんなセクハラ紛いのことを言ってしまうくらい。
それも、タチが悪いことに雪村本人は大真面目なのであった。


「なっ、何言ってんの!?」

今度こそ聞き間違えではなかったことが分かった羽田は、周りに人が居なかったことに安堵しつつも、あり得ないことを言う雪村から距離を取った。
その頬は僅かに赤くなっている。

女子生徒から人気の羽田は、なかなかウブな男であった。

そして距離を取られた雪村がまたグイッと距離を詰めてくるものだから、たまったもんじゃない。

「え、ほんと、待って、無理」
「無理?」
「う、うん、無理でしょ、そりゃ!」
「そうか…」

この状況をどう打開するか、と目を回していた羽田だか、それは杞憂に終わる。

近くまで迫っていた雪村は、すっと身を引くと、「なら仕方ないな…」ととぼとぼA組の教室から出て行った。

「なんだったんだ…」

突然現れて突然去って行った雪村の背中を、羽田は唖然として眺めていた。


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