「**」
「え、何、どうしたの急に。名字で呼ぶなんて」
「もうそろそろこうして呼べなくなるかと思いまして」
「え、あ、そうか…そうだね」
「何だか懐かしくなったもので」
「そういえば、初めて会ったときはお互い名字で呼んでたね」
「それは当然でしょう、初対面からファーストネームで呼んでいたら驚きますよ」
「まあそうなんだけどさ、付き合い始めてからもしばらくはお互い名字だったよね」
「1年くらい…でしたかね」
「最初は名字+さんとかくんとか付けてて、いつの間にかさんくんが外れて、なんで名前で呼ぶようになったんだったっけ?」
「それは……」
「え、何、はじめ覚えてるの?教えてよ!」
「いえ、あなたが覚えていないのであれば思い出す必要のないことです」
「何その含ませた言い方!気になるじゃん!なんでよー」
「大したことではないので、忘れていても不都合はありませんよ。それより今日の夕飯どうしましょうね」
「しれっと話題を変えるのやめてくれる」
「なんでしょう?」
「ほんっとはじめって、ときどき本気で性格悪いよね」
「貴方に言われたくないですよ」
「はじめよりましだよ」
「それは失礼」
「なんでこんな性悪に惚れちゃったんだろう…」
「今更何を言ってるんですか」
「付き合う前は…いや、同棲するまでははじめがこんなに性悪だなんて思ってなかったよね」
「幻滅しました?」
「まさか。それこそ今更」
「それなら良いじゃないですか」
「いいのかな…」
「それよりも。夕飯どうします?**は何か食べたいものありますか」
「特にないけど…名字呼び続行なの?」
「あと数日しか呼べないんだからいいじゃないですか。もう少しだけ名字で呼ばせて下さい」
「ふふ、いいよ。観月くん」
「……なんか、罰ゲームみたいですね」
「はじめ、顔赤いよ…照れた?」
「あの頃のあなたは可愛らしかったなと思っただけです」
「うわ失礼。ほんとデリカシーないよね」
「あなただって」
「そんなこと言うならご希望にお応えしますよ?観月くん。観月くんは今日の夕飯何食べたい?わたしに作れるものしか出せないけど…」
「…なんの漫才ですか」
「…そんなこと言っちゃって、まんざらでもないくせに。耳まで赤いよ」
「黙りなさい。本当あなたって人は…」
「でもそんなわたしに惚れてるんでしょ」
「……」
「……」
「…買い出しに行きますか」
「…そうだね」
「さあ、行きますよ。**」
「はい、観月くん」
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