微妙なえろす。
まっつん×他人描写。






学校の外れの忘れ去られた倉庫の裏等と云ういかにもな場所で、いかにもな行為。彼は腰を振っている。そのリズムに乗せて啼き声を上げているのは後輩の小柄な男の子。名前なんて知らない。顔も知らない。もしかしたら、同じ学校だからもしかしなくても擦れ違ったりはしているのかも知れないけれど、そんなの知った事じゃあない。馴れた者同士の滞りなく進む情交。二人の真っ白いシャツがいやに清潔で、まるで爽やかな運動でもしているかのようだった。否、違うか。彼に爽やかなんていかにも青少年らしい言葉は似合わない。否応なしに耳に入って来る媾い合う彼らの短い呼吸に合わせたくなくて、セブンスターを深く吸い込み、ふう、と吐き出した。

「まっつん」

ちょっと付き合えよ、なんて僕には言っておきながら、此方を顧みる気はないらしい。僕の声が聞こえたのか彼は態とらしく後輩の首筋にその端正な顔を埋めて、また小さな啼き声を引き出した。煙草をじり、と踏み躙る。

「ねぇ、まっつん」

「何だよ。邪魔すんなよ、今良いところなんだから」

言い乍も彼は律動を早めていく。周期的に繰り返される短い喘声。後輩の方は既に限界に近い様だった。まだ、かかるのか。先程煙草を捨てたのは不正解だったかも知れない。軽い後悔を覚えつつ、二本目の煙草を引き出す。口にくわえてから、安物のライターで火をつけた。吐き出す紫煙を眺めて、拗ねた子供の様な気分で彼等の無為な行為の終わりを待った。





「良いの?彼、放っといても」

「良いんだよ、彼奴はあれで」


冷たく言い放った彼に、ふぅん、と生返事をしつつ少しだけ後ろを振り返る。未だ倉庫の壁に凭れた侭の半裸の後輩が目に入った。き、と赤く腫れた目で此方を睨んでいる。まっつんの方を睨んでいるのかと思ったが、どうやら後輩は僕を睨んでいる様だった。何がそんなに気に入らないんだろう。寧ろ僕の方が被害者だと謂うのに。そう言う嗜好でも内限り男通しのセックスを見るのは不快だ。しかも其が友人のものなんて、云うまでも無い。

「わづ、」

まっつんが僕を呼んだ。彼の方は後輩とは違い既に制服をきちんと着ていた。誰が先ほどまで後輩を抱いていた等想像出来ようか。まっつんの腕が僕の腰にまわる。その侭抱き寄せられて、口付けられた。ぬめっとした舌先が唇を割り、中へ中へと侵入を果たす。が、それ以上の事は為されず控えめなリップ音をたてて唇が離された。

「いくぞ」

素っ気なく言い放ったまっつんに、最後にもう一度後輩の方を振り向けば、彼は既に僕達の方を見ておらず、泣き出しそうな顔で服を着ている最中だった。









仕方無いね



セブンスターは単に一番好きな煙草の臭い。