「  」

背後で誰かの声が聞こえた気がした。俺が振り向くよりも早く、ガウン、という鈍い音が二回耳に届いた。一瞬だけ遅れて硝煙の臭いが鼻の奥をつく。自分が撃たれたのだと思った。

(え、)

思ったより痛くないとか、こんなに思考がクリアなんだな、とか色々人事の様な気がした。ああ、でも。最期にニノさんに会いたいな。彼女は死んだ俺を見て泣いてくれるだろうか。感傷に浸って青過ぎる空を仰いだ。

「リクルート」

背後で低い声がした。誰か、では無い。良く知ったシスターのテノール。彼の声はこんな時でさえ、平淡だった。ゆっくりと後ろを振り向く。冷えたアイスブルーと目があった。彼の右腕には銃。

「すまんな、貴様は知りすぎた」

何時の間に移動したのか。シスターは俺の直ぐ前に立っていた。かちり。額に冷たく重たい感触。指があと少しでも動けば。

(終わり、)

その瞬間、感じるはずもない鉄の塊を味わった。




(さようならくらいは言いたかった)









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