高緑


二つは決して、溶け合う事は出来ない。 年を重ねていけば自然とわかる事だけど、肌と肌を触れあわせる事でしか感じられない体温をもどかしいと思う時、それを伝える術を俺は知らない。身体の奥底から止めどなく湧き上がる欲求は、とても言葉にできなくて。やり場のない劣情が、彼の肌を這う指先を粗雑なものにする。己のその荒々しさに気が付くのは遅く、いつだって陽光が彼の身体を照らしてからだった。

(違う、俺は彼に優しくしたい)

習慣の様にぶるり、と震えた己の身体を戒める様に唇をきつく噛んだ。鈍い痛みが全身を駆け巡る。 触れていた部分からそうっと指先を退いて、一度瞼を閉じる。二度、瞼を開ければ、暗闇に差した仄かな光と共に彼の視線と自分のそれが絡まった。 真っ直ぐ揺るがないその翡翠の眼差しは、彼がコートに身を投じている間の様に鋭い。まるで研ぎ澄まされた刃の様だ、と熱に蕩ける頭で考えた。けれど俺は知っている。彼のその鋭さの裏に柔らかい光の如く潜むそれは慈しみ。

「真ちゃんはまるで神様みたいだ」

陽光に輝く柔らかい髪を一つ掬えば、不機嫌さを孕んだ声が返ってきた。

「そんな上等なものとは縁遠い、生き方をしてる」

その頬に指先を這わす。ああ、温かい。先程よりも優しく触れる事が出来て、 心の内で酷く安堵した。











わたしの神様