ストリッパー峰

悪い火神とストリッパー峰

男は引き金を絞る為の俺の指先に齧り付く。ソファに寝そべる俺の足元、冷たい床で跪く様に。真っ赤な舌が俺の指を舐める。そんな些細な戯れにさえ、俺は、腹の底に渦巻く劣情を僅かに動かされた。

「青峰、」

ぐい、と不意をついて男の口の奥にまで指を突っ込めば、男は不快そうに眉をよせた。文句をいいたげに深い青が、俺をねめつける。けれど、口には俺の指が入っているから言葉は出ない。その様が堪らなく愛しくて、込み上げた愛しさを嚥下出来ずに、吐露するように笑った。その弾みで男が、吐瀉でもするかの様に俺の指を舌先で押し出す。逃がしてしまった男の口を惜しく思い乍、唾液に濡れた己の指が空気に曝され冷えていく感覚に暗い感情が沸き上がった。

「なあ、青峰。昨日のアレ、俺にも見せろよ」

はあ?と首を傾げる青峰を、視線だけで差して言う。

「今着てるソレ、昨日の夜のだろ?俺にも見せろよ、青峰クンのストリップ」
「お前が、着ろって言ったんだろ」

青峰は再度、不愉快そうに顔をしかめた後おもむろに、ゆらり、と立ち上がった。俺はソファに座っているとはいえ、常よりも幾分か高い男のその身長は、真っ黒なエナメルのハイヒールのせい。ピンヒール、といったほうがより正確かも知れない。履きこなせない女もいるだろう、極端に高いそのピンヒールを男は危なげもなく履いて、立っている。所謂アメリカンポリス、というやつだろうか青いシャツに、エナメルの帽子。そして、極めつけは、男の美しい脚を露にしている、そのタイトなミニスカート。上半身は黒のネクタイをきちんとしめているから、下半身の露出の高さ、アブノーマルが際立っていい、と思った。かん、とヒールで床を打つ。それ一つで、男の纏う空気が、部屋全体の空気が、がらりと変わって仕舞った様な気に陥る。眩しいライトも、白熱する数多の視線さえもこの部屋には存在しないが、それでも此処は既に男のステージだった。男の深い、青の瞳がすう、と閉じられて再度開く。

「さぁ、」

静かに息を飲んだ。此処はもう、俺の部屋じゃない。男の支配する、空間。長く、それでも決して華奢ではない、褐色の指がなめらかに男の肌を滑り落ちる。頬骨、唇、舌。そしてその侭に首筋をなぞり、ネクタイの結び目に指がかかった。上体をくねる様にして、それを引く。しかし、その速度はあくまで緩やかで。


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